外為法上の対内直接投資等・特定取得に係る届出/報告を遅延した場合の罰則と対応

外国為替及び外国貿易法(外為法)上、外国投資家が対内直接投資等・特定取得を行った際、一定の場合には事前届出又は事後報告を行う必要があります。

この届出/報告(以下総称して「届出等」といいます。)については、届出等の提出主体が外国投資家(非居住者や外国法人等)であることや、要件が若干複雑であることから、所定の提出期限内に届出等を行えていないがどうしたらよいか、というご相談をいただくことがあります。

そこで、外為法上の罰則・ペナルティー・法的リスクをまとめました。

1.法的リスクと必要な対応(事前届出をしなかった場合)

➀法律上の罰則

・取得株式の処分等の各種措置命令(外為法29条)
・三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金又はこの併科(外為法70条1項22号)

②必要な対応

事案調査票を作成の上、財務省国際局調査課投資企画審査室宛にメールにて連絡

参考:財務省 無届等が判明した場合について
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/monitoring_2.html

2.法的リスクと必要な対応(事後報告をしなかった場合)

➀法律上の罰則

・六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金(外為法71条6号)

②必要な対応

(a) 別紙様式 11 の 2 および別紙様式 19 の 2 以外:

日本銀行に直ちに提出。※報告書様式の「その他の事由」欄に、提出期限を過ぎての提出である旨を、必要に応じて遅延理由とあわせて記載するのが望ましいと思われます。

(b) 別紙様式 11 の 2 および別紙様式 19 の 2:

事案調査票を作成の上、財務省国際局調査課投資企画審査室宛にメールにて連絡

参考:財務省 無届等が判明した場合について
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/monitoring_2.html

3.両罰規定

法人が届出等の主体となる場合、罰則の対象者は、法人代表者と、法人の両者となります(外為法72条)。

4.事後報告の提出遅延に罰則があるか

外為法上、罰則の対象は「報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。」となっており、条文を形式的に読むと、たとえ遅れてでも報告をしたのであれば、罰則の対象からは外れるようにも読めます。

もっとも、例えば何年もにわたって継続して大規模な投資の報告を怠っていた場合等、事案の性質によっては、罰則の対象となる可能性もありますので、留意が必要と思われます。

5.事前届出の提出遅延に罰則があるか

外国投資家が、届出をせずに対内直接投資等又は特定取得を行つた場合、財務大臣及び事業所管大臣は、対内直接投資等又は特定取得により取得した株式などの処分などの措置命令をすることができます(外為法29条1項1号)。

したがって、こちらは事後報告とは異なり、届出を遅延した場合であっても、当局から措置命令を発せされるリスクがある点に注意が必要です。

遅延が発覚した場合、実務上の対応としては、事案調査票に正確かつ丁寧に経緯や事実を記載し、関係当局の指示によく従って対応するのが望ましいと思われます。

6.おわりに

当事務所では、企業法務を取り扱う大手法律事務所で経験のある、司法書士と行政書士の有資格者により、各種の変更登記及びそれに伴って必要となる外為法上の届出等に関するサポートの対応が可能です。外為法上の届出/報告の提出は行政書士の所管業務であるため、司法書士が登記をした案件で司法書士が必要な注意喚起をしなかったがために、報告書の提出漏れが発生するという事案も起こりがちです。外為法関係のサポートを希望される場合は、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
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