「金融庁電子申請・届出システム」で適格機関投資家等特例業務(QII特例)の届出をする場合の実務覚書

新型コロナウィルス禍以降、適格機関投資家等特例業務の届出については、gBizIDを用いてオンラインで提出することが推奨されるようになりました。

実際に手続きをすると、金融庁のホームページに記載されていない点で迷う点がいくつかあったため、備忘として記載をいたします。

代理人が届け出る場合の「申請者所属」欄の記載

金融庁監督局によれば、代理人が届け出る場合、「申請者所属」欄は、例えば「代理人行政書士(本人:●●合同会社)」のように記載すれば良いようです。(本人:●●合同会社)の部分には届出者の名称を記載します。

代理人が届け出る場合の「申請者」の記載

こちらはgBizIDでログインしているため選択不可となり、代理人個人の氏名となります。

代理人が届け出る場合の「郵便番号」「住所」「郵便番号(カナ)」の記載

代理人の情報を記載します。(※届出者本人の住所にはしない)

代理人が届け出る場合の「電話番号」の記載

官公署からの問い合わせに対応できる電話番号を記載します。(代理人の電話番号でも可)

「提出先」の記載

下記の「4.各種届出等の提出先」を参照して選択します。海外業者は「関東財務局理財部証券監督第3課」です。

関東財務局:適格機関投資家等特例業務関係(届出等)
https://lfb.mof.go.jp/kantou/kinyuu/kinshotorihou/tokurei.htm

「連名」の記載

基本的に「なし」になるかと思います。

「代理人」の記載

本人申請の場合は「なし」、代理人が届け出る場合は「あり」になります。

「代理人氏名」の記載

代理人弁護士や代理人行政書士の氏名を記載します。資格名はなくても良さそうです。

添付ファイルについて

FAQによれば「添付するファイルが複数ある場合、Ctrlキーを押しながら、ファイルを選択してください。」とあるのですが、なぜかうまくできなさそうでしたので、結局一つずつ添付しました。ファイルが一件しか添付できていないように見える場合は、確認をした方がよいかもしれません。

なお、QII特例届出の場合、zipファイルの添付はできません(excelかpdfのみ)。システム上、弾かれてしまいます。そのため、添付ファイルを一つのzipパッケージにして添付することはできません。届出書はexcelで、添付ファイルはpdfで添付します。

Affidavitや、公的証明書も、pdfファイルで添付すれば原本は別送しなくても受け付けられます(後日、原本を要求される可能性があるかもしれませんが)。

なお、海外業者の日本代表者として法人を選任した場合、登記事項証明書が原則として添付書類になりますが、オンライン申請の場合は添付しないようにとのことです(代わりに、会社法人等番号をコメント欄に記載する)。

コメント欄

密接関係者からの出資額等を証する書面を後日遅滞なく提出する旨や、海外業者の日本代表者として法人を選任した場合はその会社法人等番号を記載します(※下記記事も参照)。

受付から承認まで

届出が完了すると「受付完了通知」のメールがきます。その後、関東財務局側で承認されると「承認通知」、「手続完了通知」のメールがきます。受付完了から承認までは数営業日要する場合もあります。

その他(ドラフトチェックについて)

届出者が海外業者の場合、予め(Affidavitなどの公証手続をする前に)、関東財務局理財部証券監督第3課のドラフトチェックを受けてから提出することを求められます。電話をしてドラフトチェックをしたい旨を依頼すれば送付先・担当者等を確認できます。国内業者(東京財務事務所管内)の場合はドラフトチェックなしでも良いようです。

添付書類(原本)の別送について

(※2023.10.9追記)
関東財務局のWEBサイトには、添付書類については「様式20号はExcel形式、添付書類はPDF形式でご提出ください。」と記載があります。この記載からは、オンライン届出の場合にあっては、添付書類の原本の提出は要しないように見えます。しかし、実際には、担当官から、一部の添付書類の原本について、届出後遅滞なく提出を求められる場合があり、注意が必要です。

具体的にいうと、海外のAffidavitなど、公的証明が付された書面について原本の提出を求められたことがありました。Affidavitは通常海外で作成されますので、海外から原本を取り寄せる必要が生じることがあります。

なお上記取扱については、例えば登記手続におけるいわゆる特例方式(不動産登記令10条、11条、附則5条)のような法令上の根拠は見当たりません。そもそも、登記手続とは異なり、オンライン届出制度についての規定がしっかりと法定されていないように思われますので、法令上の根拠はないのかもしれません(唯一、定款を電磁的記録で提出可である旨については金商法63条4項に規定あり)。したがって専ら財務局による実務上の運用であるようにも思われます。

ただ、オンライン届出をしているにもかかわらず、紙の原本の別送が必要という取扱が必要となると、オンライン届出のメリットが損なわれるように思います。この点は将来の課題であるように感じます。(Affidavitが電子証明書が付された形式で作成されるのであれば解決する可能性がありますが…。)

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
PAGE TOP