商業・法人登記のオンライン登記申請に関する実務覚書

オンライン登記申請について、法務省のQAが分散しており、わかりづらいので、実務上よく迷って都度確認していることを、自身の覚書的に一つにまとめて記載しました。

1.はじめに ~登記申請の類型整理~

まず、類型を整理します。2023年8月現在、以下の類型の申請方法があると理解しています。
上に行くほどオンライン寄りで、下に行くほど紙寄りの方法になります。

  • 完全オンライン申請:全ての添付書類をデータで準備。紙のやり取りが発生しない。
  • 特例方式:申請書用総合ソフトを使って、オンライン上で申請。添付書類は紙で法務局に別送。「半ライン形式」と呼ばれることがある。
  • オンライン提出方式:法務省による正式呼称は「登記・供託オンライン申請システムにより登記すべき事項を提出する方式(オンライン提出方式)」。申請内容のうち、「登記すべき事項」だけデータ化されて法務局に提出されている点で完全紙申請と異なる。
  • QRコード付き書面申請:申請書用総合ソフトを利用して、QRコードが付された登記申請書(紙)及び添付書類(紙)を、紙で法務局に持参又は郵送する方法。
  • 旧来的な完全紙申請:申請書用総合ソフトは使用せず、全て紙で法務局に持参又は郵送する、旧来的な方法。

「特例方式」と「オンライン提出方式」が微妙に違うので、わかりづらいです。
「特例方式」は申請書はデータで作成し電子署名もする必要があります。これに対して、「特例方式」は申請書の一部のみがデータ化されるので、法務局に提出する申請書は紙で準備することになり、電子署名も不要です。

「QRコード付き書面申請」と「オンライン提出方式」の違いもわかりづらいです。「QRコード付き書面申請」も、「申請書に記載される情報を管轄の登記所にインターネット経由で送信」され、提出番号と処理状況確認番号が付番されます。

上記の「申請書に記載される情報」が「登記すべき事項」とイコールかは、法務局のHP等からは明らかではないように思われますが、私の解釈では、実質的に、「QRコード付き書面申請」と「オンライン提出方式」にはほぼ大差はないものと理解しています。
QRコード(二次元バーコード)付き書面申請の開始と登記事項証明書(商業・法人登記)の様式変更につい

まとめると下記のようになります。

申請書添付書類
完全オンライン申請データデータ
特例方式データ
オンライン提出方式紙(一部だけデータ)
QRコード付き書面申請紙(一部だけデータ)
旧来的な完全紙申請

2.各論

「オンライン提出方式」は、オンラインと言いつつ、大部分は紙であり、呼称が誤解を招くのと、上記のとおり「QRコード付き書面申請」と実質的に差がないと考えられることから、本稿では「オンライン提出方式」と「QRコード付き書面申請」をまとめて以下「QR方式」と呼ぶことにします。

(1) 特例方式とQR方式の違いは?

特例方式QR方式
受付がされる時点申請書用総合ソフトから申請書を送信した時点法務局に紙の登記申請書を出した時点(※)
使い方司法書士は一般的にこの方法依頼者と待ち合わせて、法務局の窓口申請する必要がある場合はこの方法をとる場合も。
※ 登記・供託オンライン申請システムにより登記すべき事項を提出する方式(オンライン提出方式)についてのQ&A Q10参照

(2) 送信後、送信内容に誤りがあった場合の対応

特例方式QR方式
手元では訂正不可。速やかに登記所に連絡をし,書面による補正又は取下げ等を行う。登記申請書(紙)を提出する前正しい内容でシステムから新たに送信しなおせばOK。誤った内容のものは放置(削除)してよい。
登記申請書(紙)を提出した後手元では訂正不可。速やかに登記所に連絡をし,書面による補正又は取下げ等を行う。
※ 登記・供託オンライン申請システムにより登記すべき事項を提出する方式(オンライン提出方式)についてのQ&A Q13参照

(3) 効力発生日前の送信の可否

特例方式QR方式
不可。本方式では送信時点で受付がされるため。
(前提として効力発生前の登記の申請はできない。)
事前に送信することは問題ない。
法務局が、紙の登記申請書を受け取った時点で登記が受付られるため。(ただし、前提として、効力発生後に申請する必要はある。)
もっとも、送信後約25日以内に申請書(紙)を提出する必要がある点に注意。
※ 登記・供託オンライン申請システムにより登記すべき事項を提出する方式(オンライン提出方式)についてのQ&A Q10, 11参照

(4) 添付書類と共に同封すべきもの

特例方式QR方式
添付書面に申請番号を記載する、又は、
「書面により提出した添付情報の内訳表」を同封。
特になし。
※ 商業・法人登記のオンライン申請について 「2 添付書面情報の添付」参照
司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
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