クラウド型電子署名で商業登記の添付書面を作成する場合の注意点は?

オンラインで登記申請する場合の、電子署名を用いた添付書類の作成方法について、注意点等をまとめてみました。

電子署名とは?

詳細な定義は「電子署名及び認証業務に関する法律」(電子署名法)に定められていますが、簡単に言えば、作成したデータに、その作成者の電子署名を付けることを、一般に「電子署名」と呼んでいます。

クラウド型電子署名とは?

クラウド型電子署名は、「立会型」とも呼ばれます。事業者が利用者の指示を受けて、事業者自身の署名鍵で電子署名を行うものをいいます。

登記手続の関係では、いわゆるクラウド型電子署名に該当するものとして、多くの電子証明書が認められています。そのリストは法務省のホームページで確認が可能です。

法務省:商業・法人登記のオンライン申請について (moj.go.jp)

クラウド型電子署名をした書類は登記申請に使用できるか?

原則として使用できます。ただし、法令上、実印相当の印鑑を押印しなくてはならないものとされている書類については、登記申請に使用することはできません。以下、書類ごとに具体的に解説します。

就任承諾書

以下の就任承諾書については、実印相当の印鑑の押印が必要なため、クラウド型電子署名をした就任承諾書は登記には使用できません。注意が必要です。

1.取締役会がない会社の場合:

取締役の就任承諾書はクラウド型電子署名不可(ただし再任の場合は使用OK)

2.取締役会がある会社の場合:

代表取締役の就任承諾書はクラウド型電子署名不可

上記に挙げた、クラウド型電子署名が認められていない就任承諾書については、公的個人認証サービス電子証明書等による電子署名を行う必要があります(色々ありますが代表例はICカードリーダーを利用してマイナンバーカードで電子署名する方法です)。

取締役会議事録

代表取締役の選定を決議した取締役会議事録については、クラウド型電子署名が認められない場合があります。少し複雑ですが、具体的には以下のとおりです。

(1)登記所に印鑑を提出している者が取締役会に出席している場合:
印鑑を提出している者が、商業登記電子署名(※1)や、公的個人認証サービス電子証明書(※2)等による電子署名等を行う必要があります。他の出席役員は、クラウド型電子署名による電子署名でOKです。
※1:商業登記電子署名は事前申込が必要です:法務省:商業登記に基づく電子認証制度 (moj.go.jp)
※2:色々ありますが代表例はICカードリーダーを利用してマイナンバーカードで電子署名する方法です。

(2)登記所に印鑑を提出している者が出席していない場合:
出席役員全員が、公的個人認証サービス電子署名等(ICカードリーダーを利用してマイナンバーカードで電子署名する方法等)で、取締役会議事録に電子署名をする必要があります。

代表取締役選定の議案が含まれていない取締役会議事録は、クラウド型電子署名でOKです。

株主総会議事録・取締役決定書

代表取締役選定議案が含まれる株主総会議事録及び取締役決定書については、クラウド型電子署名が認められない場合があります。その場合に必要な電子署名は、上記「取締役会議事録」の区分と概ね同様です。

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
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