商号・本店の変更に伴う商業登記電子証明書の再発行の実務

商業登記電子証明書の証明期間中に記録事項に変更(代表者の退任、商号変更、本店移転等)の登記がされた場合の実務上のポイントについて、情報が分散しているようですので、本稿で整理を試みます。

1.一定の条件を満たす場合は再発行可能(手数料無料)

記録事項の変更に伴い商業登記電子証明書が失効した場合でも、一定の条件を満たす場合は、手数料無料で再発行の申請をすることができます。

電子証明書が失効した場合、手数料の払戻しはいたしません。ただし、一定の条件を満たす場合は、再発行の申請(手数料不要)をすることができます。詳しくは、会社・法人の管轄登記所にお問い合わせ願います。

法務省民事局「商業登記電子証明書の取得方法について」よりhttps://www.moj.go.jp/content/001364327.pdf

東京法務局本局によれば「一定の条件」は次のとおりです(詳しくは問い合わせ願います、とあるとおり、この条件はあまり積極的に公表されていないように思われます)。

  • 代表者(証明書の名義人)の変更がない。
  • 失効しなかったとすれば証明書の有効期限内である。
  • 商号又は本店のみの変更である。

なお、(紛失等も含めた場合の)一般的な再発行の条件は次の通りとされています。
(法務省民事局 よくあるご質問・ご照会 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00034.html#18

   (1) 再発行の申請者が,失効した電子証明書に記録された者と同一者であること
   (2) 印鑑の届出をしていること
   (3) 代表権・代理権の範囲又は制限に関する定めがないこと

2.再発行申請の必要書類・手続

(1)必要書類

1.再発行申請書
2.郵送で申請する場合は返送用封筒(レターパックなど)

再発行申請書は下記サイト内で様式が公開されています。>「電子証明書再発行申請書・委任状」を参照。

法務局 電子証明書の使用廃止,使用再開等の届出書の様式
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/ELECTRON_13-2.html

(2)必要情報

電子証明書のシリアル番号が必要となりますので、予め確認が必要です。

(3)必要となる手続き(本人が直接申請する場合)

代表者本人が手続きする場合は、管轄法務局窓口に会社代表印を持参して再発行申請書に記入・押印をして申請します。前述のとおりシリアル番号の情報が必要です。
郵送による申請も可能です。この場合は、法務局から新しいシリアル番号が郵送で通知されるため、再発行申請書に加えて返送用封筒(レターパック等)の同封が必要です。

(4)必要となる手続き(代理人による申請の場合 ※司法書士向け解説)

司法書士等の代理人による手続の場合は、概ね印鑑カード交付申請と同じ手続きとなります。すなわち、原則として、商号又は本店移転の変更登記が完了した後に、再発行申請書を法務局に提出して手続きをします。

もっとも、印鑑カード交付申請と同様に、オンライン申請の別送添付書類に電子証明書再発行申請書を同封すれば便宜受付・処理してくれる取扱となっているようです(東京法務局本局)。つまりいわゆる郵送による「同時申請」が可能となっています。なお、この場合、同時申請であることのメモ書きを付すと法務局としては処理しやすいようです(東京法務局本局窓口担当者)。

郵送の場合は、添付書類がないため原本還付の問題は生じませんが、シリアル番号の通知のため返送用封筒の送付が必要です。シリアル番号は機密性の高い情報となるため、返送用封筒はレターパックプラスを準備するのが望ましいように思われます。

(5)再発行申請書に押印すべき印鑑

法務局届出印を押印します。

※商号変更に伴い改印届を提出している場合は、新商号の印鑑(改印後の印鑑)を押印します。

3.おわりに

当事務所は、「オンラインで出来ることはオンラインで」を事務所運営のポリシーの一つとして掲げており、商業登記電子証明書その他の電子署名を使用した登記手続の普及に積極的に取り組んでおります。電子署名を使用した登記手続について、ご相談事項等がございましたら、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
PAGE TOP