先日、同一企業グループ内のいくつかの会社が取得していた建設業許可につき、許可取得後の変更届出を複数の管轄当局に提出しました。
建設業許可に係る変更届出書の様式や、添付書類については建設業法及び建設業法施行規則で法定されています。しかし、管轄当局ごとに提出方法や添付書類につき、異なる扱いがされています。
具体例として、合併により法人が解散した場合の全部廃業届を例に挙げます。提出先(管轄当局)ごとに、同じ手続きでも添付書類に次のような差異があります。(2024年4月現在)
許可の種類 | 管轄当局(提出先) | 添付書類・提出方法等 |
---|---|---|
北海道知事免許 | 主たる営業所の所在地を管轄する総合振興局(振興局) | ・添付書類不要 ・所定の送り状を同封 |
東京都知事免許 | 東京都整備局 | ・閉鎖事項全部証明書 ・届出者(元役員)の実印の印鑑証明書 |
国土交通大臣免許 (主たる営業所:東北) | 東北地方整備局 | 添付書類不要 |
国土交通大臣免許 (主たる営業所:大阪) | 近畿地方整備局 | 閉鎖事項全部証明書 |
建設業法上は、廃業届に添付書類は要求されていません(建設業法12条、建設業法施行規則第10条の3、様式第22号の4参照)。しかし、事実上、郵送の場合に送り状が求められたり、閉鎖事項全部証明書が求められたりしています。東京都知事免許は最も厳しく、役員の印鑑証明書まで求めています。同じ知事免許、大臣免許間であっても、取扱に差がある点も気になります。
以上のような差異があるため、実務上は、各管轄当局がウェブサイト上で公開している手引きを確認し、届出書や添付書類の準備を進めることが必要です。
しかし、そもそも、この取り扱いは妥当なのでしょうか。
廃業届は行政法学上の「届出」に該当しますので、次の要件を満たした場合に有効な届出として扱われるはずです。
「届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。」(行政手続法第37条)
したがって、建設業法に定めのない添付書類が欠落していたとしても、本来は有効な届出となるはず――ということは、言い換えれば、管轄当局が添付書類を求める場合はその根拠が法令に規定されているべきであるはずです。
なお、建設業許可を初回に取得する際の手続きは、行政庁は行政法学上の「申請に対する処分」を行うことになります。申請に対する処分については、行政庁は審査基準を定めることとされていますので、管轄当局が審査基準の一環として、管轄当局ごとの法定外の添付書類を求める運用は理解できます。
しかし届出については、行政法学上、審査基準という観念はありません。法令上の要件に適合している届出が提出された場合には行政庁は受理・不受理の裁量はもちえません。この点からすると管轄当局ごとに添付書類が異なるのは、若干疑問がある運用といえるように思われます。またWEBサイト上で手引きが公開されているとはいえ、法令との関係において若干透明性を欠いた運用がなされているようにも思われます。
今回、当事務所では複数の管轄当局に同時に同じ種類の届出をしたことで、この問題に気付くことができました。特に届出に関して、法定外の書類を管轄当局の裁量のみで求める運用は、法令を確認するのみでは足りず、提出先ごとの独自ルールを確認する手間が発生します。理由・根拠が不明な運用であるともいえ、見直していただくことを望みたいと思います。