論考・記事

J-KISS型新株予約権をはじめとするコンバーティブル投資手段のポイント ~登記手続を中心として~ (2)
2023.03.10

J-KISS型新株予約権をはじめとするコンバーティブル投資手段について、発行後の管理、転換時について、論点の整理を試みます。
なお投資家サイド、発行体サイド、税務サイドが注意すべき論点をすべて網羅すると大変な長文になります。従って、本稿は、司法書士の目線で、主に会社法上の手続きと登記手続の観点を中心に整理したものです。
なお、コンバーティブル投資手段に関する総論及び発行時の登記手続の留意点については、前稿をご参照ください。

1.発行後の管理

(1)投資家とのコミュニケーション

新株予約権を引き受けた投資家、すなわち新株予約権は、株主ではありませんので、当該投資家を株主として取り扱って株主総会を開催する義務はありません。
ただし、投資家のニーズにあわせ、事業報告などの定期的なコミュニケーションを行うことが重要とされています。

(2)転換前のM&A、解散、清算

転換前にM&Aが起こった場合や、転換しないまま解散、清算が行われた場合は、事前に確定したリターンを投資家に分配することとなります(金銭を対価とする取得条項)。
取得条項が発動しただけでは変更登記は不要ですが、会社が取得することで自己新株予約権となりますので、消却手続の要否について検討が必要となります。

2.転換時

(1)株主間契約の締結

資金調達ラウンドで新たに参画する株主のほか、コンバーティブル・エクイティから転換した株主についても同時に締結することで、権利関係を明確化することが望ましいとされています。

(2)複数回調達時の登記

資金調達ラウンドで発行されるメインの株式と転換により発行される株式は、ディスカウント等の影響で発行条件が異なる形になるため、別の種類株式として扱い、登記する必要がある点に注意が必要です。すなわち、コンバーティブル・エクイティによる調達が複数回行われた場合は、A-1種、A-2種等の区分が増えることになります。

(3)転換時の登録免許税

転換に伴う登記申請においては、増加する資本金の額の0.7%(これによって計算した額が3万円に満たない場合は3万円)の登録免許税が課せられます。増加する資本金の額によっては数十万円程度になることがありますので、留意が必要です。

(4)転換時の行使価格払込

行使価額として1円等の低廉な額を形式的に払込む形となっている場合が一般的であり、この手続きが必要になります。形式的な払込みということで、この払込義務を投資家が失念している可能性も高いため、注意が必要です。また海外送金の場合は手数料の負担について、投資家と事前にコミュニケーションが必要です。

(5)外為法上の手続き

海外投資家が参画している場合、新株予約権の行使に伴う株式の取得について、外為法上の事前届出が必要となる可能性があります。事前届出が必要な場合、要否の分析から書類の準備当局の許可取得まで、1か月程度を要することがあります。発行時に事前届出の要否についての分析を終わらせておくことが安全です。また、事前届出が必要ない場合でも、事後報告が必要となる場合があります。外為法に精通した専門家への相談をお勧めします。

3.まとめ

J-KISS型新株予約権をはじめとするコンバーティブル投資手段については、主に発行時の条件決定や発行手続きに重点を置いて手続きをすることが多いのですが、発行後のアフターケアも大切だと感じています。あらかじめ専門家とともに論点を整理し、出口の場面においても手続きに遺漏や混乱がないように準備しておくことも肝要であると考えます。

4.概要把握に役立つ資料等

経済産業省『「コンバーティブル投資手段」活用ガイドラインについて』
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/open_innovation/convertible_guideline/convertible_guideline.html

J-KISS パッケージ (Coral Capital)
https://coralcap.co/j-kiss/