「外国会社の商業登記事務の取扱いについて」(令和4年6月24日法務省民商第307号)の概要

令和4年6月24日に、法務省民事局より、外国会社の商業登記事務の取扱に関する通達が発出されました。日本における代表者として法人を選任することが許容されるなど、実務上、一定程度影響があるものと考えられます。概要を整理するとともに、補足を加えつつ解説します。

第1 商業登記の申請関係

(1)日本における代表者の属性について

大要以下の旨が示されました。

外国会社の日本における代表者は法人がなることも可能であること
日本における代表者として弁護士を定めた場合、当該弁護士の事務所(法律事務所)の所在場所を、日本における代表者の住所として定めることも可能であること

①についての補足:

会社法上は、日本における代表者は自然人が就任することを前提にしているように見えるものの、他方で法人が取締役になることを禁じた会社法第331条第1号のような規定が存在せず、法人が就任することの可否が明確ではありませんでした。また、実務上は、自然人が就任する例がほとんどであったように思われます。
従前より、法人の従業員等ではなく法人自体を日本における代表者とするニーズも聞かれていたところであり、実務上一定程度影響があるものと思われます。
なお、本通達において、他の日本における代表者が日本に住所を有するときを除き、当該法人は①日本に住所(本店)を有するものか、②外国会社の代表者が日本に住所を有するものでなければならないこととされています(会社法第817条第1項)。

②についての補足:

税務上は、日本国内に「恒久的施設(PE)」と呼ぶ事業拠点や意思決定権者等を置いていれば、法人税の課税対象となります。このことから、PE認定を避けるべく、対外的な契約などに関わらない外部の弁護士を、日本における代表者に据える手法の是非が議論されていました。今般、これを国税庁が認めたことに関連しての取扱であると考えられます。

(2)日本における代表者として法人を定めた場合の職務執行者について

当該法人の職務執行者は下記の者でなければならないことが示されました。

原則は…当該法人の代表者
当該法人の代表者が…
法人
その代表者又はその職務執行者
当該法人の代表者が…
日本において登記された外国会社
当該外国会社の日本における代表者
当該法人の代表者が…
日本において登記されていない外国会社
当該外国会社の代表者

(3)登記手続について

大要以下の旨が示されました。

・登記申請の際は、原則として、当該法人の職務執行者が登記申請人となり、申請にあたっては、原則として、登記事項証明書(作成後3月以内のもの)の添付が必要であること

その他オンライン申請における審査基準、更正登記の扱いについて言及があります。

第2 印鑑の提出関係

大要以下の旨が示されました。

(1)外国会社の日本における代表者が法人である場合の印鑑届における届出事項

届出者として記載する主な情報は、当該法人の商号(名称)、本店、当該法人の代表者の氏名及び生年月日であることが示されました。

(2)印鑑届の添付書類

当該法人の代表者が印鑑届済登記所作成の代表者の資格を証する書面
(発行後3月以内)
当該法人の代表者が印鑑届していない登記所作成の代表者の資格を証する書面
個人実印の印鑑証明書
(いずれも発行後3月以内)

(3)日本における代表者として弁護士を定めた場合について

印鑑証明書からは法律事務所の住所の正確性が確認できないところ、「同一人であることを確認することができる書面が添付され、登記官がその内容を相当と認めるとき」は、問題ないものとされました。オンライン申請の場合についても同様です。

第3 印鑑カード関係

印鑑カード交付請求にあたっては、当該法人と同管轄法務局に請求するとき等を除き、当該法人の登記事項証明書(作成後3月以内のもの)が添付書類になる旨が示されました。

印鑑カード交付請求に添付書類が要求されるのは、後見人である法人の代表者や管財人等の職務執行者が請求する場合等、やや特殊な場合に限られていたため、事務手続面で注意が必要と思われます。

第4 印鑑証明書の交付の請求関係

(1)外国会社の日本における代表者が法人である場合

同管轄法務局に請求するとき等を除き、当該法人の登記事項証明書(作成後3月以内のもの)が添付書類になる旨が示されました。この点も、通常は印鑑カードのみで足りるところの例外にあたりますので、注意が必要と思われます。

(2)外国会社の日本における代表者の住所が法律事務所の所在場所等である場合

オンライン請求の場合に、電子署名の情報からは住所の正確性が確認できないという影響が生じ得ますが、「同一人であることを確認することができる書面が添付され、登記官がその内容を相当と認めるとき」は、問題ないものとされています。

第5 電子証明書の発行の請求関係

(1)外国会社の日本における代表者が法人である場合

電子証明書の発行の請求をすることができないものとされました。(管財人等の職務執行者について発行不可とするものと同様の扱い。)

(2)外国会社の日本における代表者の住所が法律事務所の所在場所等である場合

オンライン請求の場合に、電子署名の情報からは住所の正確性が確認できないという影響が生じ得ますが、「同一人であることを確認することができる書面が添付され、登記官がその内容を相当と認めるとき」は、問題ないものとされています。


司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
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