合同会社において外国法人の代表者が代表社員の職務執行者に就任した場合の印鑑届書の添付書類に関する考察

日本で登記をしていない外国法人が合同会社の代表社員となり、当該代表社員の代表者たる外国人が職務執行者に就任したうえで印鑑届書を提出する場合の添付書類に関して、考察するとともに整理を試みます。なお、法務局の取扱について疑問を述べている部分がありますが、あくまで筆者の私見であることをお断りしておきます。

1.商業登記規則の規定

商業登記規則第9条第5項第4号は次のように規定しています。

 会社の代表者が法人である場合における当該会社の代表者の職務を行うべき者(当該法人の代表者(当該代表者である法人の代表者が法人である場合にあつては、当該代表者である法人の代表者の職務を行うべき者。以下この号において同じ。)に限る。) 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める書面

 当該法人の代表者が登記所に印鑑を提出している場合 登記所の作成した当該法人の代表者の資格を証する書面で作成後三月以内のもの
 当該法人の代表者が登記所に印鑑を提出していない場合 イに定める書面及び第一項後段の規定により同項の書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書で作成後三月以内のもの

なお、代表社員の代表者「以外の」者が印鑑届を提出する場合においては、同法同項第5号で次のように規定されています。

 会社の代表者が法人である場合における当該会社の代表者の職務を行うべき者(前号に掲げる者を除く。) 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める書面

 当該法人の代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、当該代表者の職務を行うべき者。以下この号において同じ。)が登記所に印鑑を提出している場合 登記所の作成した当該法人の代表者の資格を証する書面で作成後三月以内のもの及び当該法人の代表者が当該会社の代表者の職務を行うべき者の印鑑に相違ないことを保証した書面で当該登記所に提出している印鑑を押印したもの
 当該法人の代表者が登記所に印鑑を提出していない場合 登記所の作成した当該法人の代表者の資格を証する書面で作成後三月以内のもの、当該法人の代表者が当該会社の代表者の職務を行うべき者の印鑑に相違ないことを保証した書面及び当該書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書で作成後三月以内のもの

2.あてはめ

本件は日本で登記をしていない外国法人が代表社員となるケースであるため、商業登記規則第9条第5項第4号ロに該当します。そして、商業法人登記の実務上、商業登記規則第9条第5項第4号ロに定める書類を、外国法人や外国人の場合に引き直して解釈する場合、他の手続きにおける運用を鑑みるに、次の解釈が自然かと思われます。

イに定める書面(登記所の作成した当該法人の代表者の資格を証する書面で作成後三月以内のもの):当該外国法人の代表者が、当該外国法人の代表者の資格を有することについて宣誓した宣誓供述書等

第一項後段の規定により同項の書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書で作成後三月以内のもの:当該代表者の署名証明書

3.法務局の運用

現在の法務局の運用は、上記2.のような解釈は採用していません。すなわち、外国法人が代表社員の場合、職務執行者が本国代表者であるか否かにかかわらず、当該外国会社の代表者が署名した印鑑保証書を提出することとされています。(小川秀樹=相澤哲編著『通達準拠 会社法と商業登記』298頁(金融財政事情研究会、2008年)、松井信憲『商業登記ハンドブック[第4版]』649頁、月間登記情報第735号第32頁「外国会社を代表社員とする合同会社の設立手続」)

4.疑問点

以下の理由で上記3.に記載された運用は疑問があると考えます。

(1)形式的理由

上記2.で検討したとおり、本件は商業登記規則第9条第5項第4号ロに該当することが明らかであり、商業登記規則第9条第5項第5号ロで求められている印鑑保証書が要求されることに関して、条文の適用関係の説明が困難であると考えられる。

また、上記3.の運用の根拠は、筆者が法務局に確認したところ、法務局の内部資料に基づくものである模様であり、一般市民がウェブサイト等で確認可能な情報や、通達等に依拠したものではない模様である。また、上記3.に記載した文献においても、保証書が求められる趣旨等について明確な説明はない(単に保証書の添付が必要だ、と記載があるだけであり、理由の説明がない)。

従って、当該運用に係る明確な根拠が不存在(仮に根拠が存在しているとしても、一般市民が確認可能な状態に置かれていない状態と考えられる)であり、その趣旨について述べられている資料も見当たらない状況であると考えられる。

(2)実質的理由

商業登記規則第9条第5項第4号は、本邦の法人が代表社員として就任した場合を前提に規定されたものであり、印鑑の届出制度がない外国法人を本邦法人と同視してこれを適用することはできないと考え、より真正を担保するために追加の書類を求めるべきである、という考えがあるのだとしたら、それは理解できなくもない。

しかし、そうだとして、印鑑届を提出するのは当該外国法人の代表者自身である。当該代表者は、提出すべき印鑑が自らが職務執行者として使用するものであるとの意思があることを前提に、印鑑届を提出しているのは明らかであり、印鑑が別人のものでないことの保証を求める理はない。

このような前提のもと、追加で代表社員の代表者による保証書を別に提出させることが、真正担保の観点から実効性があるのか疑問である。そのような保証書を作成したとしても、単なる自己証明でしかない。すなわち、商業登記規則第9条第5項第5号ロで求められる保証書は、印鑑を届け出るべき者(職務執行者)と、保証書を作成すべき者(代表社員の代表者)が異なるからこそ、真正担保の観点から実効性があると考えられる。印鑑届者と保証者の作成者が同一の者である場合に、真正担保を強化する効果があるか疑問である。

5.まとめ

印鑑の届出制度がない外国法人を本邦法人と同視しての運用が適切ではない場面があることは理解できるものの、先述したとおり、明確な説明が見当たらない状況であり、運用に関して趣旨や根拠の明示が望まれるものと思われます。

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
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