適格機関投資家等特例業務(QII特例業務)を廃止した際には、遅滞なく、その旨を届け出る必要があります(金商法第63条の2第3項第2号)。
この廃止届に関する実務上の取扱等を整理しましたので、記載します。
なお、金融商品取引業者等による適格機関投資家等特例業務については考慮せず、金融商品取引業者等以外の者が行う適格機関投資家等特例業務について記載しています。
(※法令及び官公庁(関東財務局)の取扱については2023年11月現在の情報です。)
1.廃止か休止か?
一旦は特例業務を行わないが、再開する見込みがある場合、廃止ではなく休止という選択を取ることも可能です。
但し、現在の関東財務局の運用では、休止の場合であっても年に一度の事業報告の提出義務はあるものとして取扱をしている模様です。休止を選択する場合はこの点に注意が必要と考えられます。
2.廃止届の様式・記載事項
(1)様式
廃止届の様式は関東財務局のWEBサイトで公開されています。
関東財務局:特例業務の変更届出等
https://lfb.mof.go.jp/kantou/rizai/pagekthp032000817.html
(2)記載事項
金商法第63条の2第3項第2号に基づく廃業届の記載事項は「廃止の年月日及び理由」とされています(業府令第242条第1項第2号)。
廃止の理由は、届出書の様式が示す通り、複数行にわたって、ある程度具体的に記載することが求められます。実務上、単に、「特例業務を行う必要がなくなったため」といった程度の記載では受理はされない(具体的な理由を記載して再提出することを求められる)取扱となっています。
なお、届出の記載事項については英語で記載することが可能です(業府令第242条第2項)。
3.廃止届の添付書類
(1)任意的な廃止届の場合は添付書類不要
廃止届の添付書類は業府令第242条の2に規定されています。
任意的に廃止届をする場合は添付書類は不要であり、届出書のみを提出すれば良い取扱となっています。但し、役員が欠格事由に該当した場合や、特例業者が破産等をしたような場合については、それを証する書面が求められる場合があります。
(2)密接関係者等書面
2023年11月現在の実務上、特例業務の新規届出時に「密接な関係を有する者並びに投資に関する事項について知識及び経験を有する者が出資又は拠出をする金銭その他の財産の総額等に関する書面」(「密接関係者等書面」:業府令第238 条の2第1項第3号ロ、第4号ロ)の提出が未了である場合は、廃業届に際して、当該書面の提出が求められる運用となっています。
当該書面については、「実際に財産の出資又は拠出を受けた時点で、これらの書面を提出することが適当と考えられます」とされており(2016年金融庁パブコメ73頁264番)、実務運用上、実際の出資額が確定するまでは提出をしなくて良いとの取扱がされています。これについては新規届出時のみならず廃業届時にも妥当し、廃業届提出時点においても実際の出資額が確定していなければ、その旨を説明した上で廃業届のみを提出しても受理はされます。
但し、関東財務局によれば、仮に廃業届を提出して特例業者でなくなったとしても、密接関係者等書面の提出義務が消滅するわけではなく、提出義務が継続するものとして運用されているようです。この点、注意が必要と考えられます。
4.おわりに
当事務所では、適格機関投資家等特例業務をはじめ、各種金融商品取引業登録、変更届出等の届出書作成等を行っています。手続面のサポートを希望される方はどうぞお気軽にお問い合わせください。