登記申請に株主名簿を添付すべき場合において、株式取得日が不明で記載できない場合の処理

いくつかの登記申請において、株主名簿等を添付する必要が生じる場面があります。

<株主名簿等を添付すべき場面の例>

  • 株券提供公告をしたことを証する書面に代えて、当該株式の全部について株券を発行していない場合を証する必要があるとき(譲渡制限の設定、株券を発行する旨の定款の定めの廃止)
  • 略式合併の要件を満たすことを証する必要があるとき

株主名簿には、法定記載事項として、株主が株式を取得した日を記載する必要があります(会社法121条4号)。

今回は、株主名簿が整備されておらず、上記の取得日が不明であるという会社についての対応を検討しましたので、ご紹介します。

(1)株式取得日が明らかでない株主名簿は登記申請に添付可能か

結論としては、株式取得日の記載を「不詳」とした株主名簿を登記申請に添付した場合でも、受理されている実例はあります(東京法務局管内、当事務所が2024.4に申請した登記)。また、基本的には、概ね受理されるものと思われます。

その理由は以下のとおりです。

➀株主名簿は例示

登記申請の際に株主名簿の添付が求められるのは、あくまで、株式の全部について株券を発行していないことや、略式合併の要件を満たしていることを確認するためです。そのため、株主名簿が法定の記載事項を満たしているかどうかという点は、上記の審査事項(確認事項)とは別の論点であり、登記申請には直接的には関係しないともいえます。

実際、通達上は、例えば「略式合併の要件を満たすことを証する書面としては,具体的には,吸収合併存続株式会社の株主名簿等がこれに該当する。」というように、株主名簿と記載されており、必ずしも、株主名簿そのものに限定されないと読み取ることが可能です。仮に提出した株主名簿が、株主名簿としての要件を欠いていたとしても、略式合併の要件を満たしていることが添付書面上確認できれば、少なくとも登記手続上は問題にならないものと思われます。

②「不詳」も事実

会社法上、株式取得日は法定記載事項となっているものの、「不詳」と記載することまでも妨げられているわけではないと思われます。「不詳」と記載する前提として、当然ながら相応の調査を尽くすことは必要となりますが、過去にさかのぼって正確な取得日を確認できない以上は「不詳」と記載するのはむしろベスト・エフォートに従った、事実に沿った対応ともいえます。

(2)まとめ

以上の各理由により、具体的な株式取得日が記載されておらず「不詳」とした株主名簿でも、登記手続上は支障が生じない可能性が高いように思われます。

なお、以上は、あくまで登記手続的な観点からの検討になりますので、その他の手続において問題が生じる可能性は否定できませんので、ご留意ください。

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
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