弁護士法人の支店(従たる事務所)設置の登記

弁護士法人の支店(従たる事務所)の設置登記について、具体的に解説した資料が少ないようなので、本稿で解説します。

1.必要な手続

(1)定款変更

「法律事務所の所在地」は、定款記載事項です(弁護士法30条の8第3項第3号)。いわゆる支店も、原則として従たる事務所(法律事務所)と位置付けられると考えられますので、支店設置をするにあたっては定款変更の手続きを行います。

定款変更は、原則として総社員の同意で行います。ただし、定款に別段の定め(例:社員の過半数で決定するなどの定め)がある場合はその定めに従って行います(弁護士法第30条の11)。

(2)従たる事務所の設置日・所在場所の決定

定款変更とは別に、従たる事務所の設置予定日を決定します。

また、定款で事務所の所在地を最小行政区画(例:東京都●●区)までしか記載していない場合は、番地までを含めた具体的な事務所の所在場所を決定します。

決定方法は定款に定められた業務執行方法によります。ただし、多くの弁護士法人のテンプレ的な業務執行方法は、単に、弁護士法30条の12条にあわせて「すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。」などとしていることが多いと思われます。定款上このように規定されている場合は、社員が単独で設置場所等を決定できると解する余地もあるものの、登記実務上は若干疑義もありますので、総社員の同意に基づいて決定するのが無難と思われます(私見)。

なお、更に私見ですが、本来は、定款上は「業務の執行に関する事項」(弁護士法30条の8第3項第7号)を「すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。」などと規定するのではなく、例えば「社員の過半数で決定する」など具体的な「方法」について記載する方が望ましいようにも思われます。この点についての考察は下記記事の「諸論点―(7)」でも言及しています。

2.登記手続の必要書類

必要書類は下記のとおりです。

  • 弁護士法人変更登記申請書
  • 定款変更を決定した書面(原則、総社員の同意書。定款の定めによる決定をした場合は、原本証明付定款全文+決定書面)
  • 従たる事務所の設置日・所在場所を決定した書面(総社員の同意書が原則。定款の定めによる決定をした場合は、原本証明付定款全文+決定書面)
  • 委任状(代理人による申請の場合)

定款変更の決定書面と、従たる事務所の設置日等の決定書面は一つにまとめても差し支えありません。

3.登録免許税

登記の登録免許税は非課税です。(登録免許税法上、課税対象の法人として規定されていないため)

4.登記の申請先

主たる事務所の管轄法務局に申請します。

なお、従前は、主たる事務所の管轄法務局で登記をした後、従たる事務所の管轄法務局に対しても別途登記申請をする必要がありました。しかし、本記事の執筆時(2024.1)現在は、法改正によりこの義務はなく、主たる事務所の管轄法務局のみに申請をすれば足ります。古い文献やインターネット上情報ではいまだに古い情報を見かけることがありますので、ご注意ください。

5.注意事項:社員の選任が必要になる場合も

弁護士法上、法律事務所に社員を常駐させることを義務づける規定があります(弁護士法30条の17)。従たる事務所が主たる事務所と離れた場所にある場合は、従たる事務所に常駐する者を、社員として追加で加入させることを検討する必要が生じる場合があります。

特に、社員が1名しかいない弁護士法人が、新たに従たる事務所を設置する場合は、社員の選任をあわせて行う必要が生じると考えられますので、注意が必要です。

弁護士法

第三十条の十七 

(社員の常駐)

弁護士法人は、その法律事務所に、当該法律事務所の所在する地域の弁護士会(その地域に二個以上の弁護士会があるときは、当該弁護士法人の所属弁護士会。以下この条において同じ。)の会員である社員を常駐させなければならない。

6.いわゆる支配人について

組合等登記令においては、「一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する参事その他の代理人」が選任された場合は、登記をする義務があります(組合等登記令6条)。会社でいうところの支配人類似の規定です。

組合等登記令

(代理人の登記)

第六条

組合等のうち、別表の根拠法の欄に掲げる法律の規定により主たる事務所又は従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する参事その他の代理人を選任することができるものが、当該代理人を選任したときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、代理人の氏名及び住所並びに代理人を置いた事務所を登記しなければならない。

弁護士法人に関していえば、弁護士法上は、会社法でいうところの支配人の規定(会社法10条、11条等)に相当する規定はないように思われます。そのため、「別表の根拠法の欄に掲げる法律の規定により~」の要件に該当せず、支配人について考慮することはおそらく不要なのではないかとも思われます。

ちなみに、弁護士法人について「業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」のは代表社員です(弁護士法第30条の13第3項)。

7.登記完了後の手続き

定款変更に伴い、弁護士会に届出をする必要があります。(弁護士法第30条の11第2項)

8.おわりに

当事務所では、株式会社、合同会社等のほか、各種士業法人その他の特殊な法人の登記も取扱っております。ご相談事項等がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
PAGE TOP