適格機関投資家等特例業務の届出において、国内代表者又は代理人として法人を選任することの可否

適格機関投資家等特例業務の届出において、国内代表者又は代理人として法人を選任することについて、実務上確認できた運用を記載します。

1.国内代表者又は代理人(「国内代表者等」)として、法人を選任することの可否

令和5年7月現在、適格機関投資家等特例業務に関する届出書、第4面中「3 国内における代表者又は国内における代理人の状況」(Status of representatives in Japan or agents in Japan)については、必ずしも自然人に限られず、法人を記載することも認められる取扱となっているようです。

以前から同様の取扱だったのか確認できませんでしたが、外国会社の日本における代表者として、法人の選任が認められたことになった取扱にあわせる形で、同様の取扱になったことが考えられます。

参考:

2.国内代表者又は代理人として、法人を選任した場合の添付書類

金融庁が公開している、適格機関投資家等特例業務の届出に関する「チェックリスト」にも明記されていますが、届出者が外国法人である場合は、国内代表者等の住民票の抄本、身分証明書、誓約書の添付が求められます。
根拠は業府令第238 条の2第1項第1号であり、国内代表者を「重要な使用人」と整理したうえでの運用であると考えられます。

しかし、上記の内容を見る限り、届出者の国内代表者等として法人を選任した場合の取扱が明確ではありません。この点、金融庁(関東財務局)によれば、上記1.に記載した添付書類に代えて、会社の登記事項証明書の添付を求める運用になっているようです。

なお、オンライン申請の場合は、申請画面の「メモ欄」に会社法人等番号を記載することで、登記事項証明書の提出に代える扱いとされています。

3.まとめと所感

上述の取扱は、例えば国外の金融商品取引業者が組成するファンドについては、当該金融商品業者の日本子会社等(すなわち法人自体)を国内代表者として記載することができるため、実務上歓迎できる取扱であると評価できるように思われます。

なぜなら、国内代表者等として自然人のみの選定しか認められない場合、日本子会社等の代表取締役等を国内代表者としたうえで、当該代表取締役の住民票等を手配して提出する必要があり、特に、代表取締役が外国籍の方の場合は一定の事務負担が生じる場合があったためです。

この点、法人を国内代表者等とした場合は、代表取締役に変更が生じた場合でも、日本子会社等の法人としての形態に変更がなければ、国内代表者等としての事務をシームレスに行えることになります。そのため、自然人である代表取締役等ではなく法人を代表者に選定することは合理性があり、届出書の記載を検討するうえでこの点はぜひとも考慮すべきであると思います。

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
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