論考・記事

当事務所のミッションとゴール / 企業法務に係る法律手続専門職を目指して (3)
2023.05.15

<前回の投稿はこちら↓>

法律隣接職をもっと活用してほしい。

アメリカでは、司法書士や行政書士に相当する職業は存在しないとされています。

これに対して日本では、弁護士が法律事務全てを担当する体制ではなく、司法書士・行政書士等の法律隣接職が、手続的な部分を担うことができる体制となっています。

私は日本に法律隣接職が存在することはとても意義深いことだと思っており、国民全体がそのメリットを享受してほしいと思っています。それは、弁護士に頼むよりもコストパフォーマンスのよい、専門的な知見をもった法的手続の専門家がいるということです。我々がそのメリットをもっと周知していかなければならないのですが、皆様には、司法書士や行政書士をより活用してほしいと私は願っています。

企業法務を高いレベルで対応できる法律隣接職を増やしたい。

弁護士業界でも、司法書士・行政書士業界と同様、個人を相手に法的サービスを提供する事務所の方が多いと思われます。しかし、日本のいわゆる四大(五大)法律事務所と呼ばれる法律事務所は、全て企業法務を主業務とする事務所です。これは、企業法務に関するニーズが経済成長とともに増してきたことに伴って、数名規模の弁護士では依頼者のニーズに対応することは到底難しくなり、法律事務所の大規模化が進んだという歴史的経緯があると聞いています。

これに対して、司法書士や行政書士は、なぜか、弁護士と比べて、そのような大規模事務所が登場するような状況には至っていません。企業法務に関するニーズは経済成長とともに増してきたはずなのに、司法書士・行政書士が取り残されてしまっている理由は何なのでしょうか。

私は、この点について今のところその原因を分析できていません。ただ、高いレベルで企業法務に係る法律事務を取り扱える法律事務専門職のニーズはきっとあるはずです。そのような事務所が現れていないだけだと思います。

日本の経済活動の発展に貢献したい。

例えば、パラリーガルは、弁護士の業務のうち定型的・手続的業務を引き取り、弁護士に対して弁護士にしかできない高度な検討に集中してもらうことにその存在意義があります。

法律隣接職である司法書士・行政書士も、そういった意味で、企業の経営者や法務・総務担当者の助けとなることができると信じています。

法的な手続きは面倒なものです。たとえば、不動産登記は、取引の安全のための公示機能を果たしています。わかりやすく言えば、本当にその人がその不動産について権利を持っているということを、国民の誰もが参照可能な登記簿で確認できるシステムを作ることで、安心して売買等の取引ができるようになっているということです。

公示機能が有効に機能するためには、登記の情報が信頼できるものである必要があります。そのために、本当にその人がその不動産について権利を持っているかをチェックすること―法律的な用語でいうと「真正の担保」と呼ばれるものが重要となってきます。

真正の担保を実現するために必要な手続きが、時として複雑で多層化し、面倒になるのは、登記制度の趣旨を考えると、ある程度やむをえないことだと思います。真正の担保と手続きの簡素化のバランスは永遠の課題だと思います。

我々、専門家である司法書士・行政書士が、法的に面倒な手続的な部分を担うことで、企業の経営者や担当者が、本当にその人でないとできないような仕事、すなわち新規事業の遂行や、技術の向上等に集中できるような環境を作っていきたいです。

私は企業法務に係る法律手続専門職の存在意義は、この点にあると信じています。

世界における日本のプレゼンスが落ちており、特に子育てや経済的な面で、若い世代を中心に夢や希望が持てないような社会になってきているとの実感がある方も多いと思います。一方で、それを打破しようと考える経営者の方も多くいるはずです。そういった会社・法人のために少しでもお役に立てたらと考えています。