当事務所のミッションとゴール / 企業法務に係る法律手続専門職を目指して (1)

当事務所の業務への想いと、開業して見えてきた業界に対する問題意識について、日々考えていたことをまとめたいと常々思っていました。ようやく、このたび文章の形でまとめることができましたので、公開いたします。

見えてきたのは、企業法務に係る法律事務手続を遂行できる専門職が少ないということ。

開業して一か月ほどが経ち、色々な方とお話した中で見えてきたことがあります。

それは、日本には、企業法務に係る登記・許認可等の手続を横断的に遂行できる法律事務専門職(本稿では以下「法律手続専門職」とします。)が不足しているのではないかということです。

「企業法務を取り扱える法律手続専門職」とは

私の考える、企業法務を取り扱える法律手続専門職とは、いわゆる商業法人登記に強い司法書士のことを指すのではありません。後述のとおり、登記手続は、会社法人に求められる法律的な事務手続の一端に過ぎないからです。

また、企業法務を主に取り扱う弁護士を指すのでもありません。私が協働してきた弁護士についていえば、「こういうときに登記や許認可が必要だな」ということ(何をすべきか)は理解していても、実際にどのような添付書類が必要で官公署の対応はどうなっているかといった、細かい実務上の取扱(どうすべきか)まで精通していない方も多かったためです。そもそもそのようなことは、弁護士にはあまり求められていないし、「どうすべきか」に強い手続面の専門家のニーズは別にあるのです。

私は、法律手続専門職を、商業法人登記手続及びそれに関連する各種業法に係る官公署への事務手続の両者を遂行できる専門職、というように定義づけています。

補足:弁護士、司法書士、行政書士の違い

弁護士の取扱分野は「一般の法律事件」であり、要するに法律に関すること全てを取り扱えますが、特に訴訟代理ができる点、つまり法律的に紛争の解決ができる点が特徴です。

司法書士は登記・供託の専門家であり、行政書士は官公署への届出事務の専門家です(但し社労士業務・税理士業務等、他の資格の独占業務とされているものは取り扱えません)。
司法書士、行政書士はともに、弁護士と異なり、原則として紛争性のある事件は取り扱えませんが、官庁等への手続面で専門性と強みを有していることが特徴です。

「横断的に遂行」とは

大手法律事務所でパラリーガルとして勤務しているときから、私の目指す法律手続専門職は、司法書士と行政書士の両者に求められる素養がどちらも必要だと考えていました。

会社法や商業登記に精通しているというだけでは、企業法務に係る法律事務手続を十分にカバーできないこと、そして隣接する業法等の対応も並行して必要になることが、経験上、極めて多かったためです。

具体例を挙げると以下のとおりです。他にもこのような例は多数あります。

  • 海外の企業が100%出資して日本子会社を設立する。
    →設立登記【司法書士分野】 + 外為法に基づく届出又は報告【行政書士分野】
  • 金融商品取引業者が代表者の変更をする。
    →役員変更登記【司法書士分野】 + 金商法上の変更届出【行政書士分野】
  • 特定目的会社(TMK)を利用した資産の流動化に関する手続
    →関東財務局への届出【行政書士分野】 + TMK設立・出資時等の登記【司法書士分野】
  • ベンチャー企業が新株予約権付社債を発行する。
    →新株予約権の登記【司法書士分野】 + (必要に応じ)金商法上の有価証券募集に係る届出【行政書士分野】

今回はいったんここまでです。次回は日本における制度状況等について解説します。↓

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
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