登記事項に誤りがあるのは本来好ましくありませんが、万一誤りがあった場合、速やかに、本来あるべき正しい状態にする登記(更正登記と呼ばれます)が必要です。
更正登記のうち、資本金の額の登記の更正については、単に誤りを正せばよいということではなく、検討すべき論点がありますので、本稿では整理します。
1.資本金の額を誤って多く登記した場合
資本金の額を誤って多く登記してしまった場合には、更正の登記は可能であるとされています(平成19年12月3日付民商第2586号)。この場合、誤って登記された額から、減少された額を正しい額に変更(更正)する登記をすることになりますが、会社法第447条の規定による資本金の額の減少が行われたわけではないため、同法第449条の規定に基づく債権者保護手続を要せず、また債権者保護手続に関する添付書類も要求されないものとされています(同通達)。
なお、同通達に係る照会は、「資本金の額が募集事項である資本金及び資本準備金に関する事項によって計算した額と異なる場合の更正登記の申請書」についてのものであるため、資本金と資本準備金の内訳の計算に錯誤があった場合についてのものであるとも考えられる点に留意する必要があります。
2.資本金の額を誤って少なく登記した場合
募集株式の発行の登記において、資本金の額を誤って少なく登記してしまった場合には、更正の登記を申請することはできないとされています。(平成19年12月3日民商第2584号)
この場合には、抹消登記を申請したうえで、資本金の額の変更登記を申請することとなります。登録免許税は、抹消の登記分につき2万円、資本金の額の増加の登記分につき変更後の資本金の額から抹消前の資本金の額を控除した額の1000分の7(これによって計算した税額が3万円に満たないときは3万円)となります(同通達)。
なお、上記1.と同様、同通達に係る照会は、「資本金の額が募集事項である資本金及び資本準備金に関する事項によって計算した額と異なる場合」についてであることを留意する必要があります。
3.公正証書原本不実記載罪該当の可能性
なお、資本金の額が誤っていたことに伴う更正又は抹消及び変更に係る登記申請があった場合には、事案によっては、公正証書原本不実記載罪(刑法第157条第1項)に該当する可能性があるとされており、このようなリスクを認識しておく必要があります。