論考・記事

一般建設業と特定建設業の違い
2024.02.20

建設業には一般建設業と特定建設業という二つのカテゴリーがあります。本稿では、主に一般→特定への移行を検討するにあたって、必要となる検討事項を整理します。

1.特定建設業をとる意味

特定建設業と一般建設業の大きな違いは、主に下請契約金額の違いにあります。

ここでいう下請契約金額とは、工事の全部又は一部を下請に出す場合の下請契約金額の制限(消費税込))のことをいいます。(※金額は令和5年1月1日現在のもの)

特定建設業一般建設業
4500万円以上
(建築一式工事は7,000万円以上)
(複数の下請業者に出す場合は、その合計額)
➀4500万円未満
(建築一式工事は7,000万円未満)
②工事の全てを自社で施工

上表のとおり、原則として4500万円以上の下請契約を締結するには、特定建設業の許可が必要です。逆に、4500万円の制限を超える下請契約を締結する予定がなければ、一般建設業の許可で足ります。

主に元請として建設業を営むのか、専ら下請となるのかといった会社の事業方針にあわせて、特定と一般のどちらの許可が必要かを検討することになります。

一般建設業の場合は、下請金額の制限がありますが、特定建設業はその制限を気にせずに下請契約を締結できるという点は、特定建設業のメリットの一つです。他方で、特定建設業の許可を取得するためにはいくつかのハードルがあることに留意する必要があります。

2.特定建設業のハードル

特定建設業は、前述のとおり主に元請として建設業を営むことを前提とした許認可であることから、下請保護のために一般建設業の許可取得よりも厳しい要件が求められています。

(1)特定建設業と一般建設業を両方取得することはできない

まず、大前提として、同一の業種について、特定建設業と一般建設業の許可を両方取得することはできません。(※ここでいう「業種」とは、「土木」・「建築」・「大工」等、建設工事/建設業の種類を指します。)

例えば、後述する専任技術者の配置について、ある営業所の専任技術者は特定建設業の専任技術者としての要件を満たしているが、それ以外の営業所は一般建設業の専任技術者しか配置できない、という場合は、特定建設業の許可を取得することができません。

(2)専任技術者に関するハードル

特定建設業者は、営業所ごとに、所定の要件を満たす「専任技術者」を設置する義務があります。

専任技術者の詳細な要件は都道府県が発行する手引きに記載されていますので、本稿では割愛しますが、一般建設業の専任技術者に求められる資格のみでは特定建設業の専任技術者にはなれないケースがあります。

業種にもよりますが、特定建設業の専任技術者として必要な一級建築施工管理技士や、一級建築士の資格者が足りないため、特定建設業の取得を断念せざるを得ないケースもあります。

資格保持者でなくても、所定の指導監督的実務経験があれば要件を満たすことは可能です。但し、例外として指定建設業(土、建、電、管、鋼、舗、園)は指導監督的実務経験のみでは専任技術者にはなれません。また、実務上は、指導監督的実務経験の要件を満たす人員を確保することが難しい場合も往々にしてあり、そのような場合は特定建設業の取得も難しくなります。

(3)財産的基礎等に関するハードル

特定建設業の場合、一般建設業よりも厳格な財産的基礎があることが求められます。具体的な要件は下記のとおりであり、これらを全て満たす必要があります。

①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
②流動比率が75%以上であること
③資本金の額が2,000万円以上あること
④自己資本の額が4,000万円以上あること

(4)小括

以上のように、例えば一般建設業者が特定建設業者になろうとする場合には、専任技術者(人員)や、財産的基礎に関するハードルをクリアする必要があります。事前にこういった要件が問題なく満たせているかを十分に検討することが重要かと思います。

3.参考となるサイト等

建設業許可|東京都都市整備局
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/kensetsu/index.html
建設業許可Q&A 国土交通省九州地方整備局
https://www.qsr.mlit.go.jp/n-park/construction/pdf/2103kensetugyoqa.pdf

4.おわりに

当事務所では、建設業に関する許可申請・変更届出等の代理に関する事務、その他建設業法に関する諸問題についてのご相談等を取り扱っております。建設業に関してご相談事項がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。