遺産分割による放棄と、裁判所に対する相続放棄申述の違い

相続が発生した場合、遺産の分割方法を決めるにあたって相続放棄が問題となることがあります。本稿では遺産分割協議による放棄と、裁判所に対する相続放棄の申述の違いを解説します。

1.手続きの方法は主に二つ

亡くなった方の資産を引き継ぐ権利を放棄したい(させたい)
・・・このような場合、手続きの方法は主に二つあります。

①相続人間で遺産分割協議をし、権利の放棄をする
②放棄をする人が家庭裁判所に対し相続放棄の申述をする

2.手続きの違いは

①(遺産分割協議→放棄):
放棄をする人は、遺産を相続する権利は放棄することにはなりますが、その他の相続人としての権利・義務は残ります。

②(相続放棄の申述):
放棄をする人は、初めから相続人ではなかったとみなされ、相続人としての権利・義務は一切発生しなくなります。

違いがわかりづらいですが、一例をあげると、例えば亡くなった方が生前誰かに支払をすべきだったがそれを行っておらず、死後に誰かから請求を受けたような場合、

①は遺産相続を放棄した人を含む相続人全員で対応が必要になる可能性があるのに対し、
②は初めから相続人ではなかった扱いになるので、放棄をした人は対応する必要がなくなる、という点で違いが生じます。

その他手続面でもいくつか違いがありますが、主な違いは下記にまとめました。

遺産分割協議→放棄相続放棄
効果遺産を相続する権利を放棄する。
ただし相続人としての権利・義務は残る。
初めから相続人とならなかったものとみなされる。
手続相続人間で書面作成・実印捺印亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所へ申述
(※所定の申述書と添付書類等を準備して提出する必要がある。)
手続の主体相続人全員で行う申述者が単独で行う
期限特になし相続の開始があったことを申述者が知ったときから3か月以内
撤回等の可否相続人全員の合意があればやり直しも可能。相続放棄の撤回は原則不可。
亡くなった方について死後に支払請求等があった場合の対応遺産を相続しなくても、相続人としての地位は残る。そのため、他の相続人と共同して対応が必要になる場合がある。初めから相続人ではなかったとみなされるため、相続放棄後は対応不要。

3.おわりに

当事務所は主に会社法人の登記を専門に法的サービスを提供しておりますが、相続関係のお手続きの取扱実績もございます。ご相談事項等がございましたら、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
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