監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の登記

監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の登記手続について、論点となりえる点を整理しました。

1.監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の登記の添付書類

添付書類がケースによって異なるため、意外と複雑です。

(1)平成18年4月30日以前に設立された株式会社

長年放置されていた会社で、定款に監査範囲限定の規定がない場合があり気づきにくいです。注意が必要です。

・資本金が1億円以下かつ最終貸借対照表上の負債額が200億円未満。(平成18年5月1日当時)
・株式の全部に譲渡制限規定がある。(平成18年4月30日以降)
・監査役の監査の範囲について定款を変更していない。(平成18年5月1日以降)
・監査役会及び会計監査人を設置していない。

→会計限定監査役の定めが記載された定款 又は 上申書(記載例は下記)

当会社は,平成18年5月1日当時,現に資本金の額が1億円以下であり,最終
の貸借対照表の負債の部に計上した金額の合計額が200億円未満である株式会社
であったことから,会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17
年法律第87号)第53条の規定により,監査役の監査の範囲を会計に関するもの
に限定する旨の定款の定めがあるとみなされており,その後現在に至るまで当該定
款の定めの設定又は廃止に係る株主総会の決議をしておらず,当該みなされた事項
を定款に反映していないため,定款又は株主総会の議事録を添付することができま
せんが,当会社は当該定款の定めがあるとみなされた株式会社であることを証明し
ます。 ●年●月●日 ●●株式会社 代表取締役●●

(2)平成18年5月1日以降に設立された株式会社

・株式の全部に譲渡制限規定がある。
・監査役の監査の範囲について限定する定款の定めがある。
・監査役会及び会計監査人を設置していない。

→会計限定監査役の定めが記載された定款 又は 当該定めを設ける旨の定款変更を決議した株主総会議事録

2.監査役設置会社の定めの廃止をすることになったが、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定め」の登記の申請が行われていなかった場合

個別的なケースになりますが、少しだけ論点がありますので、整理して記載します。

(1)添付書面

・株主総会議事録(監査役設置会社の定めの廃止を決議したもの)
・株主リスト
・上記1.に従って添付すべき添付書類 (※)
・登記委任状(代理人による申請の場合)

※定款を添付する場合は、原本証明文言をどうすべきかが若干悩ましいですが、例えば「上記は、●年●月●日付株主総会決議における変更前の定款に相違ない。」のように、変更前の定款であること、すなわち変更前から会計限定の旨の規定があった旨を明確にする方が望ましいと思われます。

(2)注意点:「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定め」の廃止登記も必要

監査役設置会社の定めの廃止の登記を申請する場合には、同時に、監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定めの廃止の登記も必要になるため、注意が必要です。職権で抹消してくれそうにも思われますが、そうではありません。

3.参考資料

https://houmukyoku.moj.go.jp/kyoto/page000151.pdf

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
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