論考・記事

代表取締役の予選に関する諸論点
2023.05.15

代表取締役をあらかじめ選定すること(予選)についての論点について整理しました。

代表取締役をあらかじめ選定することは可能か

取締役の重任(再選)前にあらかじめ取締役会において代表取締役を選定することも、合理的な期間内であれば認められます(昭41・1・20民事甲271号回答)。

再選が許される合理的な期間とは具体的にはどのくらいか

たとえば1か月前程度であれば許容されると考えられています。

株主総会において取締役を予選し、改選前の取締役が新代表取締役を予選することはできるか

株主総会において取締役が全員再選されて取締役会の構成メンバーに変更がない場合は認められます。他方で、株主総会において取締役会の構成メンバーに変更が生じる場合は、登記実務上予選は認められていません。

ケーススタディー

3月末決算の会社の場合です。4月1日が日曜日であるために当日に取締役会が開催できないような場合、以下のとおり決議日と就任日の関係に留意する必要があります。

(1) 新取締役・新代表取締役を共に4/1就任予定として3月中に予選する場合

・3月中の株主総会において、A(代表取締役候補者)を4月1日付で取締役に選任する旨の決議をする。
・その後3月中の取締役会で、「Aが4月1日付で取締役に就任することを条件として、Aを代表取締役に選定する」旨の決議をし、Aを代表取締役として予選する。

→4/1時点の取締役会の構成メンバーと、3月中の取締役会の構成メンバーが異なり、Aが代表取締役の選定決議に加われないため、この方法は認められていません

(2) 新取締役としては3月中に就任させ、新代表取締役としては4/1付就任として予選する場合

・3月中の株主総会において、A(代表取締役候補者)を、即日取締役に選任する旨の決議をする。
・その後3月中の取締役会で、「Aを4/1付で代表取締役に選定する」旨の決議をし、Aを代表取締役として予選する。

→決議時点と就任時点の取締役会の構成メンバーが同一であるため、この方法は可能です