論考・記事

ドメインの価値
2023.03.15

先日、ドメインについての規制が完璧に整備されては言えないのではと考える機会がありました。司法書士・行政書士の視点で、論点を検討してまとめましたので、ご紹介します。

1.ドメインとは

起業をした場合、独自ドメインのウェブサイトを作成することも多いかと思います。ドメインとは、インターネットの住所のようなものと例えられます。当事務所のホームページアドレスの場合で言えば「sigrioffice.jp」の部分がこれに該当します。

2.登記との関係

会社の公告方法として電子公告を選択したり、貸借対照表を電子公告で掲載する会社でなければ、会社のホームページのアドレスは登記事項ではありません。
逆に、公告方法として電子公告を選択する際はホームページアドレスが登記事項となりますが、そのような場合でも、一般的に、どのようなドメインを選択すべきかについて制約はありません(公告掲載ページに辿りつければ問題ありません)。

3.ドメインは好きに決めてよいのか

上記のとおりドメインについては原則として登記上の制約はなく、インターネット上の記事にも、ドメインを決める際は自分の気にいったものを選べばよい、という記事も見かけることがあります。しかし、この意見には若干疑問があります。何の考えもなしにドメインを取得すると、思わぬリスクを抱える可能性があるように思います。以下解説します。

4.ドメイン(TLD)の価値は平等ではない

ドメインにはgTLD、ccTLDといった分類があります。
概要を簡単に表にまとめると以下のとおりです。

正式名称具体例特徴
gTLDGeneric Top Level Domain.com/.net/.org/.edu/.gov など地理的制限なく取得可
ccTLDcontry code Top Level Domain.jp (日本)/.kr(韓国)/「.fr」(フランス)など 国ごとに割り当て

一般的には、こういったドメインは、広く一般に使用されていることから、信用度が高いと評価されているものと考えられます。

もっとも、最近はこれら以外の新興的なドメインも登場してきています。.black、.party、.christmas.、furniture等がその例です。

こうしたドメインを選択することは、個性や新興企業感を出せるため、ベンチャー企業等で選択を検討される方もいらっしゃるかと思います。

しかし、信用という点ではgTLDやccTLDに劣る場合があると考えられますので、注意が必要です。信用を踏まえると、必ずしも、ドメインは好きな文字列を選べばよいということではないということです。以下、より詳細に解説します。

5.詐欺サイトに使用されるドメインも

日本サイバー犯罪対策センター(JC3)では、URLのTLD(トップレベルドメイン)が、.top、.xyz、.bid等、見慣れないTLDを使用しているサイトは悪質サイトの可能性もあるとして、注意を呼び掛けています。

このようなことを知らず、新興企業感を出そうという理由のみで、こういったTLDを使用してしまうと、悪質サイトとして疑われるビジネス上のリスクがあると考えられます。したがって、こういったTLDを安易に使用することは、避けた方が無難と思われます。

また、.comや.ne.jpは、一般的にドメインの取得費用が高いこと、またTLDの前に使用しようとする文字列+.comや.ne.jpが、既に誰かに抑えられているという理由で、新興のTLDを使用することを検討する場合もあるかと思います。
この場合、既にドメインを抑えている者が行っている事業と、自社の事業が似たものである場合、相手方から営業妨害と解釈され、思わぬトラブルに発展する可能性もあります。よって、誰かに抑えられているから別のTLDでドメインを取得しようという考えも、避けた方が無難と思われます。

閲覧者の立場からすると、怪しいTLDは怪しいと感じるのですが、自身が選定する立場になると、目新しいTLDも良いかもと考えてしまい、そのようなことに意識が向かないことも意外とにあると思われました。注意が必要です。

6.gTLDのようでもありccTLDのようでもあるTLDも

.jpn.comというドメインがあります。gTLDのようでもあり、ccTLDのようでもあるTLDですが、WHOIS情報で検索すると、RegistarとしてInstra Corporation Pty Ltd.という会社が出てきます(2023年2月現在。なお古い情報サイトをみるとかつてはCentralnic社というところだったようです)。

IT関連の詳細な説明は他の専門家が書かれている記事がありますので、そちらに譲りますが、インターネット上で得られる情報を総合的に踏まえると、要するに.comのドメインInstra社が買って、そこに.jpnを付したドメインを再販している、というのが実態のようです。

7.ドメイン販売サイトの対応は妥当か

以上に述べたようないわゆる新興的なドメインも、ドメインの販売サイトでは、gTLDやccTLDと同列に扱い、詐欺サイトに使用されないよう求める注意喚起や、再販ドメインである旨等の説明を何らすることになしに販売しています。一般の消費者はgTLDやccTLDの知識が必ずしも十分にあるとは言えません。何らかの説明を付して販売するよう求めるような対応が望まれるようにも思われます。