本稿では、外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」といいます。)の対内直接投資等規制上求められる事前届出(外為法27条)について、実務上の進め方の概要を整理します。
1. 必要情報・提出要件などの確認
対内直接投資等に係る事前届出が必要となる可能性のある取引を確認した場合、まずは必要となる届出や報告の種類を確認することになります。そのうえで、主に必要となる情報は下記のとおりです。
- 発行会社(日本国内の対象会社)の事業内容
- 届出者(外国投資家となる株式取得者等)の基本情報(名称・本店所在地・代表者・事業内容など)
- 対象となる取引行為の時期(提出期限の確認のために必要)
- 対象となる取引行為の態様(設立・増資・貸付・株式譲渡など)
- 支払(特に日本と外国間)の有無、支払(予定)年月日
特に重要となるのが、発行会社の事業内容が事前届出に該当するか否かという点です。こちらは財務省のWEBサイトをチェックして確認します。「関連法令」>「指定業種を定める告示」,「別表第一」,「別表第二」,「特定取得に係る指定業種を定める告示」,「コア業種を定める告示」,「特定取得に係るコア業種を定める告示」にあるものが事前届出業種となります。なお「別表第三」は、事前届出業種には該当しないいわゆる「事後報告業種」となります。
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/index.htm#regulation
2. 届出書フォームの確認
最新の届出書フォームを日本銀行WEBサイトで確認します。予定される取引(対内直接投資等)の内容ごとに様式が分かれているため、誤った様式を選ぶことのないように注意が必要となります。
日本銀行:届出書様式および記入の手引等
https://www.boj.or.jp/about/services/tame/t-down.htm
3. 届出書の記入・提出準備
届出書の記入又は入力、提出の準備を行います。記載例や記載要領に沿って準備することが肝要となります。
4. 届出書の提出
オンライン又は紙(郵送又は持参)で日本銀行宛に提出します。(本来の宛先は、事業所管大臣宛となりますが、日本銀行を経由して提出することとされているため、日本銀行宛になります。)
提出された届出書は、日本銀行で形式的な不備等がないかチェックされます。不備等があれば担当官の指示に従って必要な補正等を行います。その後、各官庁(事業所管大臣)宛に回付され、届出内容の審査が行われます。
5.質問票への回答
近年は、対内直接投資等に係る規制が厳しくなっており、各監督官庁から審査のための「質問票」が届出事務担当者宛にメールで送付されることが殆どです。質問票の内容を確認し、回答を記載した質問票を監督官庁に返送します。
近時の質問内容の傾向として、主に以下のような点が確認されることが多いように思われます。
- 届出者のグループ会社の有無、資本関係等
- 外国政府関係者との関係の有無
- 発行会社の情報管理体制
- 個人情報収集の有無、また管理方法
- 対内直接投資等を行う趣旨・目的・経緯等
6.審査完了、届出行為可能日の公示
審査が完了するまでの間、事前届出を行った取引は行うことができませんが、監督官庁による審査が完了すると、日本銀行HPにおいて、該当の受理番号が公開されます。審査完了の旨は官公署から通知されることがありませんので、公示があったことの確認は届出者が自ら行う必要があります。
https://www.boj.or.jp/about/services/tame/index.htm
7.事後報告の提出
届出をした対内直接投資等の実行後、実行に係る報告が必要な取引又は行為については、所定の様式にて実行報告(事後報告)を行う必要があります。