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【相談事例紹介】債権者代位による合併登記
2025.04.22

1.事案の概要

・株式会社Aは、株式会社Bに合併して解散しているが、当該合併による所有権移転登記がなされていない。

・登記申請人は、株式会社Bに対して、不法行為に基づく損害賠償請求権を有している。

・債権者たる申請人は、株式会社Bが損害賠償の支払をしないので、株式会社Bに代位して、株式会社Aが所有権登記名義人となっている不動産につき、合併による所有権移転登記手続をする。

2.論点

(1) 登記申請に添付すべき代位原因証明情報として、具体的にどのような書面を添付すべきか

(2) 登記申請書に記載すべき代位原因はどのような記載ぶりとすべきか

3.解説

(1) 代位原因を証する情報としては、一般に、債権者代位権発生の原因、すなわち債権発生の原因を証する情報(例えば、金銭消費貸借契約書、抵当権設定契約書、売買契約書)であれば足りるとされています。不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき債権者代位権を行使する場合、判決正本を添付するのが相当であると考えられます。

(2) 一般的な記載例としては「年月日金銭消費貸借の強制執行」「年月日売買の所有権移転登記請求権」「年月日設定の抵当権設定登記請求権」等がありますが、本件の場合はいずれにも当てはまりません。東京都内の管轄法務局に確認したところ、適宜の記載で問題なく、例えば「令和●年●月●日不法行為に基づく損害賠償請求権の強制執行」などとすることでも実際に登記可能でした。もっとも、何か前例があっての記載というわけではありませんので、管轄法務局によっては別の記録となる可能性もある点にご留意ください。

4.その他の注意点

代位登記の場合、申請人自らが登記名義人となる場合に該当せず、登記識別情報は通知されない(不動産登記法第21条)ことに留意する必要があります。