海外の者が株主になっている会社・法人については、会社法上の一定の行為に伴って、外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」といいます。)に関する報告や届出が必要となる場合があります。本稿では、会社法上の手続に伴って発生する可能性のある典型的な外為法上の手続きを示して、解説を加えることといたします。
1.対内直接投資等の届出または報告
海外に居住する個人や、海外に本店がある法人等、外為法上の「外国投資家」に該当する者が、日本国内の会社の株式や持分を取得する場合、対内直接投資等に該当し、一定の届出や報告が必要となる場合があります。
たとえば、以下の手続きで非居住者が関係するものは、外為法上の手続が必要となる可能性が高く、注意が必要です。
- 会社の設立(海外法人や非居住者が株主となる場合)
- 増資、新株発行(海外法人や非居住者が株主となる場合)
- 親会社の変更(海外法人や非居住者に変更される場合)
また、設立や増資予定の国内の会社が、外為法上のいわゆる事前届出業種を営んでいる場合は、予定されている手続の実行前に日本銀行に対して届出をし、許可を得てからでないと手続ができないこととされています。この点は、スケジュールに与える影響が大きく、特に注意が必要です。
事前届出業種は、大まかにいえば、例えば武器,航空機,人工衛星など、国の安全保障上への影響が大きいと考えられる業種を指します。近年は安全保障に対する重要性が高まってきており、一定のソフトウェア業,レアメタル,医薬品関連など、従来は事前審査が必要とされなかった業種が追加されていますので、特に注意が必要です。
事前届出業種を営んでいない会社については、取引実行後、一定の期間内に事後報告を行うことで足ります。
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2.資本取引に関する報告
対内直接投資等とは別に、日本と海外との間で金銭等のやりとりが発生する場合、外為法上の資本取引に該当し、報告が必要となる場合がありますので、注意が必要です。
資本取引の典型例としては以下のようなものがあります。(いずれも、日本法人と海外法人/海外居住者の間のものに限り、たとえば海外間で行われるものは除きます。)
- 貸付/借入
- 債務の保証
- 証券の取得/譲渡
- 不動産の取得
このうち、実務上は、例えば株式を非居住者から譲渡により取得した場合の、証券の取得または譲渡の報告(1億円相当額を超えるもの)や、不動産の取得に関する報告を提出すべき場面が多くみられるように思われます。
3.本邦にある会社等の内部留保等に関する報告
次の会社が報告の対象となります。
- 外為法上の外国投資家のうち、非居住者により、議決権の100分の10以上を所有されている本邦にある会社。(ただし、当該会社の資本金の額が10億円に満たない場合は、報告不要。)
- 外為法上の外国投資家のうち非居住者により、特定出資の総口数の100分の10以上を所有されている本邦にある特定目的会社。(ただし、当該特定目的会社の特定資本金の額と優先資本金の額を合計した額が10億円に満たない場合は、報告を不要)
これらの会社については、事業年度開始後3か月以内に、外国投資家の議決権割合、報告者の主要資産負債勘定及び内部留保残高等について報告することが必要となります。
4.おわりに
以上、外資系の会社について、日常特に注意し、また典型的に必要となる手続についてご紹介いたしました。当事務所は、外資系企業や、クロスボーダーの取引を多く扱った経験のある専門家による、外為法関係の手続のサポートについて多くの経験を有しています。これらの外為法上の報告や届出、外為法上の手続きに関するご相談事項等がございましたら、ぜひ当事務所までご相談ください。