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債権者への個別催告について実務上の注意点
2024.11.20

会社法上、減資や組織再編などの手続きを行う際には、債権者への個別催告を行う必要があります。本稿では、個別催告を行うに際しての実務上の注意点を整理します。

1.債権者の一覧表の作成

登記手続上、個別催告を行った場合には「催告をしたことを証する書面」が添付書類となります。この書面には、催告書の様式(雛形)と共に、送付先債権者の一覧表を添付することが通常求められますので、催告書の送付に際して送付先をリスト化しておくことが必要となります。

債権者の一覧表に記載する項目としては、登記手続上、住所と氏名(名称)の記載があれば足ります。メールで送付する場合でも、メールアドレスの記載は不要と考えられます。その他、電話番号等や会社担当者名を記録として載せることは差し支えありませんが、登記申請に際して法務局に提出する場合は、余計な情報を載せないという意味で、住所・氏名(名称)以外の情報はあえて記載しない方がよいようにも思われます。

2.催告書の送付方法

会社法上は、催告の方法は法定されていませんので、送付方法はメールでも郵送でも問題はありません。

3.送付先の選定

会社法的には、原則として全ての債権者に対して催告を行う必要があります。

債権者への催告が漏れた場合、債権者からのクレームや、最悪の場合減資や組織再編手続の無効の訴えがなされるリスクがあります。もっとも、実務上、海外の債権者、サブスクリプション・サービスのプロバイダー、少額の債権者、電力会社や水道会社等実質的に異議が述べられる可能性が低い債権者など、一部の債権者への催告を省略する判断をする会社もみられます。しかし、原則として全ての債権者に対して催告を行う必要があることを念頭に、上記のリスクを勘案のうえ送付先を選定いただく必要があります。

対象の債権者は、いつの時点を基準とするべきでしょうか。これについては、公告掲載又は催告書を発送する時点での債権者と考えることが一般的です。

異議申述期間中に新たに債権者となった会社をどう扱うべきかについては会社法上明文の規定はありません。ただ、そのような会社を対象に含めてしまうと、そこから新たに一か月の異議申述期間を設定する必要があり、いつまでも債権者保護手続が完了できないことにもなってしまいます。

また新たな債権者に対しては掲載済の公告で減資や組織再編の予定を把握する機会は確保されているはずであり、それを承知のうえで会社と取引していると考えることが一応可能ですので、公告掲載後の債権者は含めない整理にするのが一般的かと思われます。

4.送付方法ごとの注意点

(1)郵送:

・なるべくならトラッキングができる方法で送る(特定記録郵便・レターパックライト・レターパックプラスなど)。紛争の可能性がある相手については、配達証明郵便とすることも検討する。

・到達した時点から異議申述期間が始まるため、遅くとも効力発生日の1か月+1日前に届くように送る。(特に遠方の債権者の場合は、余裕をもって送付する。)

・送付ミスや住所データの未更新等の原因による不達(返送)が生じないように注意する。など

(2)メール:

・一斉送信の場合は、bccで送るなど、情報管理に配慮する。

なお、催告文言をメール本文に書く形式でも問題はないのですが、登記手続のことを考慮すると催告書をpdfで添付のうえ送付する方法の方が良いと思います。前述の1.のとおり、催告書の雛形を用いて「催告をしたことを証する書面」を作成する必要がある関係で、メールの送信画面よりも書面の様式を雛形として用いる方が登記の添付書類として作成しやすいためです。

5.まとめ

個別催告については、法律面もさることながら事務手続等の実務に関するお問い合わせやご相談事項も多くいただきます。当事務所では、減資や組織再編等、個別催告が必要な手続については、豊富な経験に基づきサポートが可能ですので、ご相談事項などがありましたらどうぞご遠慮なくお問い合わせください。