論考・記事

資本剰余金からその他利益剰余金への振替の手続き
2024.10.25

資本剰余金からその他利益剰余金への振替につき、手続き上の論点を整理します。主に減資の後の剰余金の処理において、この点が問題になることが多いように思われます。

1.会社法上の手続き

振替については、剰余金についてのその他の処分として、株主総会決議により行うことになります。(会社法第452条)

2.振替可能額と基準時点

直近の事業年度末の利益剰余金がマイナスになっていない場合は、たとえ期中に利益剰余金がマイナスになったとしても、振替はできないとされていますので、注意が必要です。

すなわち、振替可能額の上限は、確定した(直近の定時株主総会で承認を受けた)貸借対照表上の利益剰余金のマイナスの額までとされています。

これは、会計上の考え方によるものです。企業会計基準第1 号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準61項には次の記載があります。

「なお、会社法では、株主総会の決議により、剰余金の処分として、剰余金の計数の変更ができることとされたが(会社法第452 条)、会計上、その他資本剰余金による補てんの対象となる利益剰余金は、年度決算時の負の残高に限られる。これは、期中において発生した利益剰余金の負の値を、その都度資本剰余金で補てんすることは、年度決算単位でみた場合、資本剰余金と利益剰余金の混同になることがあるからである。」

https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/kansoka_2015_1.pdf