論考・記事

外国会社の日本における代表者の変更登記(営業所設置のない場合)
2024.10.25

営業所設置のない外国会社の日本における代表者の変更登記について、詳細に解説した資料が少ないようですので、本稿で整理を試みます。

1.営業所を設置している外国会社の場合

この場合は、日本における代表者の退任と就任の登記を、営業所所在地の管轄法務局に宛てて申請することになります。

2.営業所を設置していない外国会社の場合

(1)同管轄の場合

退任する日本における代表者と、新たに専任された日本における代表者の住所が同一管轄法務局内にある場合は、日本における代表者の退任と就任の登記を、現在の管轄法務局に宛てて申請することになります。

(2)管轄法務局が異なる場合

(a) 申請の方式

例えば、退任する日本における代表者Aの住所が東京都、新たに専任された日本における代表者Bの住所が大阪府にある場合についてはどうなるのでしょうか。

この点については、(ア)商業登記法131条3項に基づき、日本における代表者の住所移転の登記に準じて(いわゆる経由申請をするものとして)取り扱うものとされているとの見解と、(イ)まず現在の登記所に日本における代表者の変更登記を申請し、その登記事項証明書を添付して新代表者の住所地を管轄する登記所に変更登記を申請するとの見解があるようです。

当事務所が実際に担当した案件で2024年9月に管轄法務局(千葉地方法務局)に確認したところでは、上記(ア)の見解を採用しており、実際にこの方法で登記ができましたが、念のため手続ごとに確認をすることをお勧めいたします(※)。

※仮に商業登記法131条3項に該当する場合、(イ)の方法で申請してしまうと同項が準用する商業登記法51条に反し却下事由になる可能性もあるように思われましたので、(ア)が無難と考えています。しかし、商業登記規則96条1項は4号と6号とで別の場面であることを前提に明確に規定が分けられていることを踏まえると、商業登記法131条3項は住所移転の他日本における代表者の住所地においてする当該代表者の退任の登記をする場合も含むと解すべきなのか若干疑問があります。

(b) 「登記記録に関する事項」の内容

登記申請後の、前任の日本における代表者の住所地管轄法務局における登記記録は以下のようなイメージとなります。

登記記録に関する事項の「年月日就任」「年月日登記」「年月日閉鎖」についてですが、平成30年に商業登記記録例が法務省民事局から発出されている模様(一般には公開されていない資料のようです)であり、現在はその記録例にならって登記がされるようです。平成30年以前は記録例がなかったそうなので、記録例発出前後で、記録の記載ぶりが異なっている場合があります。