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金商法上の電子公告と電子公告調査の要否
2024.09.27

会社又は外国会社が、金融商品取引法第50条の2第6項に基づく、金融商品取引業の廃止、合併、解散、分割、事業承継、事業譲渡に関する公告を電子公告で行った場合の条文解釈に関する論点です。

1.電子公告採用の可否

法人が上記の公告を行う場合の公告方法ですが、当該法人における公告の方法(公告の期間を含む。)により行うものとされています。(金融商品取引業等に関する内閣府令205条1項)

そのため、金融商品取引業者は、定款で会社の公告方法として電子公告を採用することにより、金商法上の公告を電子公告で行うことができます。

2.電子公告調査の要否

まず、公告の在り方についてですが、金商法50条の2第9項によって準用される会社法940条1項1号により、金商業等の廃止等の日の30日前の日から効力発生日まで、継続して電子公告をする義務が生じます。

この電子公告については、電子公告調査機関に調査依頼をすることが必要となります。金融商品取引業者等が行う公告は、会社法941条の「他の法律の規定による公告」に該当するためです。

この結論は、金商法のみを見ると条文解釈上誤解が生じる可能性があり、注意が必要と考えられます。金商法第50条の2第10項により、公告調査を求める会社法941条が準用されるのが、外国会社たる金融商品取引業者等に限られていることから、反対解釈により、外国会社以外の会社については調査依頼不要のようにも一見読めるからです。しかし、外国会社たる金融商品取引業者等の場合は、会社法941条の調査を受ける義務が当然には生じるものではありません。このため、金商法第50条の2第10項は、外国会社に対して電子公告調査を義務付けることを手当てする趣旨の規定にすぎず、同項の反対解釈により外国会社以外の会社の調査義務を不要と解するのは誤りとなります。

3.電子公告調査を怠った場合のリスク

電子公告調査依頼をすべき公告について電子公告調査を怠った場合であっても、その電子公告が公告として無効ということにはならないとされています。ただし、会社法上、取締役、監査役等が100万円以下の過料の制裁を受ける可能性があります。

なお、金商法50条の2第6項に基づく公告については、同条第7項の規定に基づき、内閣総理大臣に対して公告をしたことを届け出る必要がありますが、この届出に関しては、少なくとも法令上は電子公告調査依頼に関する書類を添付することは特段求められていません。