合同会社の代表社員が、外国会社の登記をしていない外国会社の場合、その職務執行者が行う印鑑届の添付書類については、取扱が法令上明確になっておらず、実務上迷う点が多くあると思われるため、本稿で整理します。
1.必要書類
商業登記規則第9条第5項第5号ロに基づき、①代表社員の代表者の資格を証する書面(例:宣誓供述書)、②代表社員の代表者が作成した印鑑保証書、③代表社員の代表者のサイン証明書が必要となります。
2.公証の方法
上記1.①の宣誓供述書は、代表社員となる法人の準拠法国官憲による公証(認証)が必要なのに対し、上記1.③のサイン証明書は、代表社員となる法人の代表者の国籍国官憲の公証(認証)が必要と取り扱われています。この点注意が必要と考えられます。以下、具体例をもとに解説します。
(事例1)外国会社の準拠法国と、代表社員の代表者の国籍が同じ場合
代表社員A:シンガポールの外国会社(※日本で登記はしていない)
代表社員の代表者:シンガポール国籍
合同会社の職務執行者:中国国籍
この場合は、宣誓供述書・サイン証明書ともにシンガポール官憲の公証を受ければ問題ありません。
(事例2)外国会社の準拠法国と、代表社員の代表者の国籍が異なる場合
代表社員:シンガポールの外国会社(※日本で登記はしていない)
代表社員の代表者:イギリス国籍
合同会社の職務執行者:中国国籍
この場合、宣誓供述書はシンガポール官憲、サイン証明書はイギリス官憲の公証を受ける必要があるとされています。
印鑑届書に外国人が署名する場合には、当該書面の署名が本人のものであることの当該外国人の本国官憲(※当該国の領事及び日本における権限がある官憲を含みます。)の作成した証明書の添付をもって、市区町村長の作成した印鑑証明書に代えることができるとされています(平成28年6月28日付け法務省民商第100号民事局長通達)。
この「本国官憲の作成した証明書」についてですが、法務局の通達の解釈として「当該外国人の国籍国の領事の作成した署名証明書が添付されていれば、市町村長の作成した印鑑証明書の添付に代えられることを明らかにしたものと考えられる。」と捉えているようです(どこかに根拠文書があるようですが具体的な出典は不明)。
すなわち、代表社員の準拠法国と代表社員の代表者の国籍国が異なる場合には、宣誓供述書中に代表者の資格証明や代表社員の署名が真正である旨の記載があっても、代表者の署名の真正の部分については「本国官憲」の公証と取り扱うことはできないとの結論になります。
そのため、宣誓供述書の取得とは別途、当該代表者の国籍国の本国官憲(日本における領事におけるその他権限のある官憲を含みます。)のサイン証明書を取得する必要があるとの取扱いとなり、注意が必要です。
3.宣誓供述書中に署名証明の内容が含まれる場合の取扱
事例1(代表社員の準拠法国と代表者と国籍が同一)の場合で、宣誓供述書に代表者の署名があり、かつ、宣誓供述書中に、当該宣誓供述書中の署名が当該代表者のものであることの証明がある場合、印鑑届書には、別途代表者個人の署名証明書の添付は不要と取り扱われています。
4.保証書の位置づけと公証の要否
上記1.②の保証書については、上記1.①の宣誓供述書の内容として印鑑保証の記述を入れ込んだうえで本国官憲の認証を取得し、上記1.①の宣誓供述書を上記1.②の保証書としても兼ねる形で準備する取扱が多くみられる模様です。
もっとも、宣誓供述書とは独立した書面として保証書を別途作成する方法―すなわち内国会社が代表社員となり職務執行者を選任した場合に用いる保証書と同様のフォームに、代表社員の代表者が署名をする形式でも問題はありません。この場合は、上記1.①の宣誓供述書、1.③のサイン証明書への公証は必要ですが、上記1.②保証書単体への公証は不要です。
なお、宣誓供述書の内容として保証書の内容を入れ込む場合、予め、上記1.①の宣誓供述書に保証対象の届出印(すなわち合同会社の代表印)を押印するか、印影を画像等で示す等の処理が必要となると考えられます。外国法人が外国(現地)のみで宣誓供述書の作成を完結させようとする場合は、事務手続上この点で支障が生じる可能性があるものと思われます。