権利義務承継取締役がいる状態で誤って登記された後任取締役の登記の抹消の要否

取締役の退任により取締役の員数が法定の最低員数を欠いた状態となり、権利義務承継取締役が存在する状態になったにもかかわらず、その状態が解消されていないうちに一部の取締役のみが後任取締役として選任され、誤って登記されてしまった事案の対応を、解説します。

事案の概要

・取締役会設置会社。取締役はA、B、Cの3名であった。

・取締役Aが辞任し、後任として取締役Dが選任された。

・取締役Aの辞任日と同日に開催された定時株主総会終結時をもって、取締役B及びCは任期満了により退任した。しかし、会社はこの任期満了退任を把握しておらず、それに伴う後任者の選任を失念した。

・上記事情から取締役B及びCの退任の登記はなされなかった一方、取締役Aの辞任及び後任取締役Dの就任登記がされた。

・その翌年、取締役B及びCがそれぞれ取締役として再選された。

問題の所在

Aは、B及びCとともに退任し、権利義務承継取締役となっていました。退任した複数の取締役の者の間に順位等の区別をつけることができないことから、Aの辞任登記は、本来は申請(受理)すべきでない登記であったものと思われます。

そうすると、原則論としては、一度Aの辞任登記を抹消して、再度辞任登記を申請する、次のとおりの登記を申請する必要がありそうです。

①A辞任に係る登記の抹消登記
②B及びCの退任登記
③Aの辞任登記(現在の日付で再度申請)
④B及びCの就任登記

抹消登記は不要という結論に

もっとも、上記①及び③の登記を申請することに、あまり実益があるとも思えません。管轄法務局と協議したところ、①及び③の登記申請は不要という見解でした。

後任が選任され、権利義務承継状態が解消されるまでは権利義務承継取締役の退任登記は原則できませんが、その原則に反して誤って登記されたものをあえて一度抹消することまでは不要という考え方も成立するようです。

仮に、抹消登記が必要となると、登録免許税として2万円が余計にかかってしまいます。抹消登記不要という結論は妥当ですし、良かったと思います。

なお、個別の事案として総合的に検討された結果であり他の事例にも当てはまるものかは不明ですのでご注意ください。

おわりに

当事務所では、過去に行うべきだった登記がなされていなかった場合の対応、長年手続きが放置されていた場合の対応等についても、豊富な経験を有しています。このような場合の登記手続についても、是非ご相談ください。

司法書士・行政書士 司栗事務所代表。日本企業やグローバル企業からの依頼による会社・法人の設立、株主総会、M&A、グループ内再編、独禁法関連、特定目的会社を利用した資産の流動化、金融商品取引業、投資法人(REIT)等に係る登記手続や官公署への届出事務等に多数関与した経験を有する。
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