論考・記事

みなし解散の登記 ~法務局から通知書が送られてきたら~
2023.03.10

一定期間、登記手続をしていない会社や法人は、法務省による休眠会社・休眠一般法人の整理作業によって、事業継続中であっても、解散したもの(要するに廃業状態)とみなされてしまう場合があります。
本稿では、当該整理作業とその対応について整理します。

休眠会社・休眠一般法人とは

次のいずれかの会社や法人を指します。

・最後の登記から12年を経過している株式会社(会社法第472条)
・最後の登記から5年を経過している一般社団法人または一般財団法人(公益社団法人または公益財団法人を含む)。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「法人法」といいます。)第149条、第203条)

なお、有限会社(特例有限会社)は含まれません。

休眠会社・休眠一般法人の整理作業が行われる趣旨

実態のない会社が残存すると、実態と登記が乖離することになり支障が生じることになります。こうした理由から、長期間登記申請をしていない会社や法人については、職権で、解散したものとみなすこととされています。

なお、株式会社の場合、休眠会社となるのが最後の登記から「12年」に設定されているのは、株式会社の取締役の任期が最長で約10年であることを踏まえてのものです。

第1回の整理作業が行われたのが昭和49年、そこから平成14年までは計5回の整理作業が行われました。しかし、平成26年以降は毎年整理作業が実施されています。司法書士に対する相談事例も増えています。

休眠会社・休眠一般法人の整理作業の流れ

毎年10月頃、法務大臣による官報公告がなされ、その後対象となる会社法人に対して、管轄の登記所から、法務大臣による公告が行われた旨の通知が送付されます。(会社法第472条2項、法人法第149条第2項、第203条第2項)

通知を受領したら司法書士に相談を

事業を廃止しておらず、会社を継続する必要がある場合、公告から2か月以内に、次の2つのいずれかの対応が求められます。

1.必要な登記申請をする。
2.「事業を廃止していない旨の届出」をする。

上記1.については、過去にすべきであった手続きが長期間放置されている可能性が高いと思われ、登記されている内容や定款等から、何の登記を申請すべきか確認が必要です。
これについては、十分な法的知識がないと困難な場合も多々あろうかと存じますので、司法書士等の専門家にご相談をされることをお勧めいたします。

上記2.については、送付されてきた通知書の下段にある届出書を提出する必要があります。
届出書自体は単純な様式ですが、登記簿に記録されている事項と符合しないときは、適式な届出として取り扱われませんので、記載内容に迷うことがあれば、これも、司法書士等の専門家にご相談されることをお勧めいたします。

通知を放置することのリスク

上記1.または2.の手続きをしなかった場合、登記官によって職権で解散の登記がなされます。

解散した会社は、清算(会社を畳むこと)の目的の範囲での事業活動しか行えなくなりますので(会社法第476条、法人法第207条)、通常どおり事業を継続することはできなくなります。
また、登記記録に解散の登記が入ってしまうことから、取引先が登記記録を確認した場合、取引を継続できなくなる可能性が高いと思われます。

過料が課される可能性に留意

会社や法人は、登記した事項に変更が生じたときは、原則として2週間以内に変更の登記をする義務があります。これを怠ると、会社の代表者らは、最大100万円の過料の制裁を受ける可能性があります(会社法第976条第1号)。そして、先述した必要な対応を行ったとしても、長期間登記を怠っていた事実は消えません。
過料の制裁は裁判所の決定に基づき行われ、事後的にこれを回避したり過料の金額を減額するために司法書士等が助言できる方策は残念ながらございません。しかし、いずれにしても、①登記をしていなかった事実が発覚した場合には速やかに登記をすること、②今後の再発防止のために、登記すべき事項をチェックしておくこと、をお勧めいたします。
登記事項のチェックや、チェックリストのご提供など、司法書士にてお手伝いできることは多々ございます。必要に応じて、司法書士をぜひご活用ください。

解散の登記がなされてしまった場合は

みなし解散の登記後であっても、3年以内に限り、株主総会、社員総会または評議員会の決議によって、会社または法人を継続することは可能です。会社継続をすることとなった場合には、2週間以内に登記手続が必要となります。
上記総会等の開催、登記手続までの流れについては、若干複雑な手続となりますので、専門家に相談しつつ進めるのが確実です。司法書士をぜひご活用ください。